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黒羽が胡蝶の耳を貸り、小声で何かを話し終えた後
胡蝶は不死川の方へと向き直り、微笑を浮かべたかと思えば
「えっと…その、余計な事を聞いてしまいましたね…。すみません、とりあえず…お大事になさって下さい。___」
少し戸惑った様子ではありながらも、用具箱を抱え、そのまま部屋を立ち去っていった。
胡蝶が去った後、不死川は睨むような視線を黒羽へと向けて
「お前、胡蝶に何言ったァ?」
そう尋ねると、黒羽は何事もなかったかのような顔で
「師範には、単なる痴情のもつれだと説明しておきました。…不死川さんが任務前に、女の所に行きたいと言うので仕方なく着いて行ったと。」
「それで、しばらく外で待っていたら『別れる』だとか何とか…甲高い女性の声がして、多分…その時に付けられた傷だろうって説明しておきました。」
「あと…不死川さんは今、女に振られ傷心中なので…あまり傷を抉らないであげて下さいとも言っておきました。」
淡々とした口調でそう告げた後、黒羽は不死川の方へと視線を向けて
「…アンタが困ってるようでしたから、助け舟出してあげたんですよ。感謝の一つや二つ、してもいいかと思いますけどね。」
一切悪びれる様子もなく、不死川に対してそんな言葉を投げ掛ける。
「何が助け舟だァ、泥舟の間違いだろォ」
「ったくよォ…有りもしねェ事吹き込みやがってェ…、」
不死川はそんな黒羽の言葉に苛立ちを感じながらも、
「……」
黒羽の方へと静かに視線を移し、少しの沈黙の後で口を開く。
「それと、ああいう事は…気安くするモンじゃねェ」
「…本当に好きな奴とだけしろォ、___」
呟くようにして不死川がそう告げる中、
「(好きな奴…ね、…)」
黒羽は一瞬視線を落としながらも、すぐさまその視線を戻し
「そんな人…もう何処にも居やしませんよ、」
「アンタが一番分かってる癖に、随分と酷な事言うんですね。」
ニコッと微笑み掛けながら、不死川に対してそんな言葉を投げ掛ける。
黒羽は笑みを浮かべながらも、その瞳の奥には寂しげな色を宿しており
「…紫、___」
不死川は咄嗟に口を開き、何か言葉を掛けようとするものの
黒羽は不死川の言葉を待たずして、口を開き
「そろそろ…命日でしたよね、良ければ一緒に墓参り行きませんか。」
「見て呉れだけでも仲良くしておいた方が、彼も喜ぶでしょうし……どうです、?___」
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作者名:雫 | 作成日時:2023年9月18日 10時