検索窓
今日:32 hit、昨日:50 hit、合計:13,459 hit

61 ページ12

____日を追う毎に漏れ始め、いつしか空になる事は分かっていた。



違和感を覚え始めたあの日から、既に答えは見えていた。



どれだけ懸命な治療を施し、効果のある薬を作り出したとしても



根本的な原因を断ち斬らなければ、何も救う事など出来ない。



アイツは…私に対して『人を救える力がある』とそう言ってはいたが



その言葉は私の心を抉りに抉り、



『____き…、…』



アイツの方が何人も…何十人も、何百人も人を救える力があって



強い鬼を倒せば倒す程、助かる命は増え続ける。



一方、私がやっている事はその場凌ぎの事でしかなくて



たとえ命を繋ぐ事が出来たとしても、次帰ってくる時は…変わり果てた亡骸をただ眺めるだけで



どうしようもない無力感に囚われ、私のやっている事に意味など何一つ見出せやしない。


















____何が…『人を救える力がある』だ…。



私には…アイツのように、皆を救う力なんてない。



『ッ…嘘吐き、___』



顔を上げ、そんな言葉を吐き捨てると同時に



側に転がる瓶を手に取り、勢いよく叩き付ける。



その際、割れた瓶の破片が手に刺さり、血がだらだらと流れはしたものの



痛みを感じる余裕もなく、次々と瓶を叩き割った。



硝子の破片が散らばる中、とある小瓶を手に取った際、僅かな重みを感じ



視線を移すと、そこには鬱陶しいくらい色鮮やかな…アイツから貰った金平糖が入っていた。



短く舌打ちをし、躊躇う事なくその瓶も叩き割ろうとはしたものの



あの時、アイツが見せた…あの顔が脳裏に浮かび



『…ッ…、…』



振り上げた腕を下ろすと同時に手の力が抜け、



手放した小瓶が床へと転がる中



顔を伏せ、血だらけの拳をきつく握りしめる。
















『…気に食わない、』
















…何故、アイツという存在にここまで乱されなければいけない。



アイツから貰ったこんな物、他の瓶と一緒に叩き割ってしまえばいいというのに



それが出来ない自分に、心底腹が立つ。



『あんな奴…早く死ねばいいのに…っ』



苛立ちと共に、そんな言葉を吐き捨ててはみるものの



畳の上には、まばらに雫が零れ落ちるばかりで



手に突き刺さった硝子の破片は、微塵も痛くなかったというのに



アイツに放ったその言葉は、跳ね返って自分の心に深く突き刺さり



どうしようもない程、痛くて…堪らなかった。

62→←60



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.5/10 (27 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
66人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2023年9月18日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。