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すると、先程まで軽々と交わせていた斬撃が、童磨の頸を捉え
「…!」
童磨は少し驚いたような表情を浮かべた後、西條の方へと視線を向ける。
「(あ…そうか…、なるほどね…。)」
違和感の正体にようやく気付くと同時に、思わず頬を上気させ
頸に刃が突き刺さったまま、童磨は軽快な口調で
「君、そんな顔も出来るのかぁ…さっきより、ずっといい顔してるよ…、その顔…まるで____」
すると、先程よりも西條の刀が童磨の頸へと捻じ込み
「…!?」
斬り落とす寸前まで刃を持っていかれ、
今まで余裕の笑みを浮かべていた童磨も、思わず目を見張る。
そして、西條が静かに口を開いたかと思うと
込み上げるものを押し殺すようにして、突如くつくつと笑い出す。
「…そろそろ……君の死も…、…近いか……?」
童磨を捉えたその瞳からは…かつて、彼女が宿していた光は消失し、
代わりに、冷淡で…残酷な色を瞳に宿し、西條は何処か嬉しそうな様子で童磨を見上げる。
そして、柔らかくも…残酷な笑みを浮かべながら
「……なァ、」
そう一声掛けると同時に、さらに刃を捩じ込み
「 今日は…いい夜に、なりそうだなァ____」
童磨はそんな彼女の言葉に応えるようにして、
「そうだね…、本当に今日は…いい夜だ。」
愛おしそうに目を細め、微かな笑みを浮かべながら
自身に突き刺さったその刃を、すぐさま抜き取る。
そして一度距離を取り、静かに西條を見つめながら
「(当初は…殺して喰べてしまおうと思っていたけれど…それだと勿体無いかな…。)」
「(彼女はきっと…俺らと同類…、そうでなければ…あんな顔しない……いや、出来ないだろう。)」
童磨は何か確信めいた様子で、そんな事を思った後
目の前で不敵な笑みを浮かべる西條を目にし、思わず口角が上がり
「(間違いない…彼女のあの『目』は____)」
『 人殺し 』の目だ
その後、童磨は終始ご機嫌な様子で、西條を見つめ続け
「(嬉しいなぁ…また仲間が増えるかもしれない…。彼女の実力であれば…きっとすぐ、上弦まで上がってこれる筈だ…。)」
そんな事を思いながら、童磨は口を開いて
「君の死ぬ間際に…俺の血を分け与えてあげるよ。」
「君も…あの方に、選ばれるといいね。___」
静まり返った森の奥深くに、
不気味なその声だけが異様に響いた。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年7月19日 18時