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その後も、西條と不死川の交流は続き
気づけば二人の間には、出会ってから四年もの月日が流れていた。
その中で西條に対する、不死川の思いは徐々に変化し
不死川が遠目から、煙草をふかす西條を眺めていると、
「なァ、お前…まだ西條の事、好きなの?」
不意に背後から声を掛けられ、振り返るとそこには宇髄が立っており、
「無類の酒好き、煙草好きなアイツの何処がいいんだか…、分かんねェなァ本当…お前、女の趣味変わってるな。」
宇髄がそう話すと、不死川はそんな宇髄に背を向けながら、歩き出し
「……テメェには…分からなくていい、___」
そう呟いた後、そのまま西條のもとへと向かい
西條から煙草の箱を、軽々と取り上げる。
「オイ…それ二箱目だろォ、一箱までにしとけって…あれ程言ってるよなァ?」
そう声を掛けるが、西條から返事はなく、
【 煙草返せ 】との文字を地面に綴り、訴えるような目で不死川を捉える。
不死川はそんな西條を叱りながらも、
「(コイツ…、まだ…聞こえねェのかァ……。)」
そんな事を思いつつ、不死川は西條の隣へと腰を下ろす。そして、少し視線を落としながら
「なァ、もう少し…自分の身体の事、考えちゃくれねェかァ……俺ァ、お前に死んで欲しくは___」
そう言って、不死川が西條の方へ目を向けると
視線が重なると同時に、西條が自身の顔をじっと見つめていることに気がつき
「……?」
不死川が不思議そうな表情を向けると、西條の華奢な指が滑り込むようにして顔へと触れ
顔にある傷を辿るようにして、優しく撫でた後
柔らかくも何処か艶かしい眼差しを向け、西條は不死川に微笑み掛ける。
「…っ…、…」
不死川がそんな西條に思わず心を奪われていると、
西條は一瞬の隙をついて、不死川から煙草を取り上げ
ひらひらと手を振りながら、何事もなかったかのようにして、その場を去っていく。
不死川はそんな西條の後ろ姿を見つめた後、
「(あー…クソ、…)」
ガシガシと頭をかきながら、上気した頬を隠すようにして、顔を伏せ
そして…何処か思い詰めたような表情を浮かべて、
「(アイツ、耳聞こえなくなってから…全く話さなくなったよなァ…。)」
「(……声、聞きてェなァ___)」
微かに残る煙草の匂いを感じながら、そんな事を思うばかりだった。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年7月19日 18時