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一方、その頃…星宮は自室へと籠り、
薄暗い部屋の隅で膝を抱えながら、眩しい日差しが降り注ぐ外の様子を、ただ茫然と眺めていた。
そんな星宮の脳裏には、ある男の冷たい声がよぎり
『__何故、未だにこの程度の技も習得出来ない?』
『私の血が流れているのであれば、容易く出来る筈だ。』
『これ以上、私を失望させるな___』
その声を思い出す度、星宮は視線を静かに落とし、膝をきゅっと抱え込む。
すると、突然部屋の襖が開き、
「何してんだァ、お前。…そんな部屋の隅で縮こまってよォ」
不死川はそう言った後、黙り込む星宮の隣に腰を下ろす。そして、そんな様子の星宮を横目で見ながら
「おはぎ…食うかァ、?」
手に持っていたおはぎの包みを差し出す。
星宮はその包みを受け取り、中を開けておはぎをじっと見つめた後で
「……箸は。」
「はァ…?そんなモン、手で直接食えば___」
「箸」
「………、…ッ…たくよォ…持ってくればいいんだろォ、持ってくればァ…、」
不死川は苛立ちながらも立ち上がり、すぐに箸を取ってきて、星宮へと手渡す。
星宮は「…いただきます、」と言って手を合わせた後、おはぎに箸を付け食べ進めていく。
育ちの良さが感じられる所作を目にしながら、不死川は隣でボソッと呟くようにして
「口は悪ィのに…食べ方は綺麗なんだなァ…、」
不死川の言葉を受けた星宮は、淡々とした口調で
「…お前は言葉も食べ方も…全てに品が無いな。」
その言葉に不死川が苛立ちを見せる中、星宮は付け足すようにして続けて
「…父さんが…行儀作法にも厳しい人だったから、…嫌でもこの食べ方が身につく。…、」
不死川はそう話す星宮を静かに見つめた後、口を開いて
「……親父とは、最近会ってねェのかァ。」
そう尋ねると、星宮は一旦箸を置いて
「…しばらく会ってない。仮に…会いに行ったとしても、あの人は私と口を聞いてくれないと思う…。」
星宮はそう言った後、視線を落としながら
「……あの人は、私が『星の呼吸』を使いこなして、いずれは柱になる事を期待してる…。その為に、小さい頃から稽古を付けてもらってはいたけど…、」
「一年、二年…数年かけても、『星の呼吸』は使えなくて…かろうじて出せるようになった壱ノ型も…未だに完璧に使いこなせない…、」
「父さんはきっと、そんな私を…心の底から軽蔑してる___」
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作者名:雫 | 作成日時:2023年6月12日 2時