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「誰が老害だァ…殺すぞ、クソガキ」



苛立つアイツを気に留める事なく、手元にあった用具箱の蓋を開け



「アンタは立派な老害ですよ。…実際アンタ、今日で一つ歳取る訳ですし____」



そこまで言いかけたところで、咄嗟に口を閉じ



「(…しくじった、)」



自身の発言を振り返り、心の中で思わず溜息を吐いてしまう。



…コイツの誕生日を覚えているのを、目の前の本人に知られてしまう事が



「(癪に障るというか、何というか…。)」



そんな事を思いながら、アイツから視線を外した状態でいると



「そういえば…そうだったなァ、…今日は俺の誕生日かァ」



アイツは今思い出したかのようにして、ポツリとそう呟く。



「何だか、あまり…嬉しくなさそうですね。」



僅かに視線を落とすアイツに対して、そんな言葉を投げ掛けると



「いや、そういう訳じゃねェけど…」



「この日になると…毎年匡近が盛大に祝ってくれてたなァって、思い出すからよォ…。こう…何つーか___」



アイツは…その後の言葉は告げる事なく、



「…いや、何でもねェ。手当て頼むわァ」



隊服の袖を捲り、怪我の状態を此方へと診せる。















特に会話をする事なく、手当てを終えた後は



「ありがとなァ」



アイツはいつものようにお礼を言って



その場に立ち上がり、診察室の扉へと手を掛ける。



私は無言でアイツの背中を見送ろうとしたものの、



先程の言葉と、少し寂しげな…あの表情が目に浮かび



「(…うざ、)」



内心そんな事を思いながらも、立ち去ろうとするアイツに対して



「不死川さん、アンタ…この後何か予定ありますか。」



「…?特に…ねェけど、」



「そうですか、じゃあ少し外で待ってて下さい。まもなく師範が帰ってくるかと思うので…、その後は一緒に食事に行きましょうか。」



そんな言葉を投げ掛けると同時に、アイツに対してニコッと微笑みかける。



「お前…また俺に高い飯奢らせるつもりだろォ…。」



怪訝な表情を向けるアイツを、特に気に留める事なく



「…とりあえず早く出てって下さい。次の患者控えてるんで、」



アイツを追い出し、次に訪れた隊士の診察を行いながら



「(付き合い長いですけど、私…あの人の事そこまで知らないんですよね…。)」



「(…さて、どうしましょうか。___)」



大して知りもしない男の誕生日を、これからどう祝うか考えていた。

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作者名: | 作成日時:2023年11月29日 0時

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