11月29日 ページ1
***
(黒羽 side)
___11月29日
この日が近付くと、彼はいつも楽しそうで
『実弥の誕生日プレゼント…今年は何にしようか、』
『紫は…これとこれだったら、どっちがいいと思う?』
そんな話を私へと持ち掛けながら、手に取ったモノを交互に眺める。
『うーん…やっぱり、こっちの方がいいのか…?』
『もういっそ、どっちも買おうか…悩ましいな…。___』
…せっかく、匡近と二人で街中に出向いたというのに
匡近の頭の中はアイツの事でいっぱいで、
『(くたばれ…不死川実弥…。)』
そんな事を思いながら、アイツの誕生日プレゼントを選ぶ匡近の後ろ姿を眺めていた。
その日の帰り道、匡近は丁寧に包装された箱を抱えながら
『紫は…実弥に何か買わなくて良かったのか?』
そんな問いを私へと投げ掛ける。
『…あげる義理ない、』
その問いに即座に返答すると、匡近は苦笑を浮かべながらも
『紫から誕生日プレゼント貰えたら…実弥、絶対喜ぶと思うけどなぁ…。』
穏やかな眼差しで私の姿を捉え、そんな言葉を投げ掛ける。
『……』
匡近のその言葉に、特に返答はしなかったものの
『(匡近から貰った方が…アイツも嬉しい…。)』
そんな事を思いながら日が暮れる中、蝶屋敷へと帰宅した。
***
「(___11月…29日…。)」
壁へと掛けていた、暦へと目を向けて
今は亡き、彼と交わした…あの日の会話が思い起こされはしたものの
「(別に…関係ない、)」
そんな事を思いながら、色鮮やかな羽織を見に纏い
「(師範は午前中不在…昼頃戻るって言ってたっけ…。)」
診察室の方へと向かい、頼まれた業務を着々とこなしていく。
その傍ら、人手が足りないとの事で…隊士たちの回復訓練にも付き合い
「薬湯も滴る…いい男って奴ですね、」
「まァでも…そろそろ本気出さないと、中身硫酸に変えますよ?全身溶けても知りませんからね。」
若干の脅しを交えながら、隊士たちに訓練を施した後は
ふたたび診察室へと戻り、椅子へと深く腰を掛ける。
「(…眠、)」
欠伸をしながら、柔らかな日差しに照らされていると
診察室の戸が勢いよく開き、目の前の男に対して思わず舌打ちをしてしまう。
「オイ…お前、今舌打ちしただろォ…」
「…してませんよ、幻聴じゃないですか。不死川さんも歳ですね、クソ老害。」
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作者名:雫 | 作成日時:2023年11月29日 0時