【黒バス】夏のはじまり、恋のはじまり【黄瀬涼太】

犬みたい ページ23

黄瀬は約束通り、美術室へと向かっていた



(Aっち、まだいるかな？)



後ろのドアのガラス窓から中を覗く



キャンバスや肖像画、絵筆、絵の具…



絵を描くために用いる道具が溢れている



窓際の椅子に座っているAっちを確認し、俺はゆっくりとドアを開けた



絵の具の匂いがふわりと鼻先をかすめる



俺はなんとなく｢お邪魔します｣と言ってから足を踏み入れた




『…涼太くん？』




黄｢Aっち！部活中にごめんね｣




『全然、大丈夫。どうしたの？』




黄｢いや、特に理由はないんスけど…｣




ふと、机の上にあるでっかい紙が目に入った




黄｢この紙ってなにに使うんスか？｣




『これはね、体育祭の応援旗だよ』




黄｢へぇー！美術部が描くんスね！｣




『そうなんだ』




黄｢そっか…体育祭は来週っスもんね｣




『うん』




黄｢Aっちは借り人競争にでるんスよね？｣




『うん。涼太くんはリレーだよね』




黄｢そうっス！！｣




そう言って彼は自信ありげに微笑んだ




黄｢男子が俺で、女子が後藤さんっスよ！｣




『女子は彩香なんだ』




クラスの女子で1番足が速い彩香



運動部に入ればよかったのに私と同じがいいからって美術部に入ってくれたんだ



『涼太くん、頑張ってね』




黄｢もちろんっス！Aっちに応援してもらったからには優勝目指すっスよ！｣




『っあはは』




頑張ってね、そう言っただけなのに彼はとても嬉しそうに笑っている



おまけに耳と尻尾も見える



なぜ私が笑っているのかわからないのであろう涼太くんは、キョトンとした顔で首を傾げている




彼は本当に犬みたいだ

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