episode53 ページ7
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『……とりあえず人虎くん虐めるのは後にしてもらっていい?私早く帰りたいから』
芥川と敦のやり取りを蔑んだ目で見つめるA。
その言葉に芥川は無言で敦から足を退けた。
白鯨の落下を止め、ヨコハマの街を救ったことで、場の緊張は幾ばくか緩んだ。とは云え此処にいるのは犬猿の仲の青年二人と乱入時から苛立ちを隠しもせず傍若無人に振る舞う少女が一人。状況は最悪だった。
「と、とにかくまずは外部と連絡を取っ……て!?」
敦がこの冷え切った場を何とかしようと口を開いたところで、ガクンと機体が大きく揺れる。
そして、先程止めたはずの白鯨の降下が再び始まる。
「そんな馬鹿な!何もしてないのに!!」
「寄越せ」
軽く混乱状態になる敦から制御端末を奪い操作を試みる芥川。しかし、「操作を受け付けぬ」と早々に端末を放り投げ、一同は途方に暮れる。
『…何かが起こっているのは間違いない。操舵室にでも行ったらいいんじゃない?』
どこか他人事のようにそう提案するAに芥川は何かを云いたげにしつつも、「…そうだな」と結局は彼女を肯定し、その足を進める。
敦も何か云いたげな様子ではあったがAの案に同意したようで、無言で芥川の後を追った。
──しかし、操舵室でも機体の落下を止める事はできなかった。
「駄目だ、こっちの操作も受け付けない!このままじゃ落ちるぞ!!」
どの機械も装置も、一切の操作を受け付けない状況で敦が切羽詰まったように叫ぶ。
『ま、そう簡単に此処で操作出来ていたなら端末なんて奪う必要もなかったし、最初から苦労なんてしてないけどね』
「…それが解っていて何故此処へ来た」
『物は試し、って云うでしょう。別にいいじゃない、何処に居ても結果は同じなんだから』
この状況下でもあっけらかんとしているAに、彼女の対応には慣れているはずの芥川も少し苛立ちを感じているようだった。
『…多分、外部から何者かが侵入して機関制御を奪ってる。この機体の再浮上は望めない』
Aの言葉に、敦と芥川はぎりっと奥歯を噛み締める。そんな二人の様子を彼女は可笑しそうに笑う。
『誰も“諦めろ”とは云ってないでしょう。白鯨の再浮上は無理でも大質量でコレを無理矢理叩き落とせば街に届く前に墜落させる事ができる』
『そうしたら、万事解決でしょ?』と首を傾げるAは完全に芥川と敦の理解の範疇を超えていた。
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暁月臨(プロフ) - きなこもちさん» きなこもちさんのペースで頑張って下さい!! 気長に待ってます!!(*≧∀≦*) (6月21日 21時) (レス) id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 暁月臨さん» 暁月臨さん嬉しいお言葉ありがとうございます、更新止まり気味ですがそう言ってもらえるととても励みになります!頑張りますm(_ _)m (6月21日 18時) (レス) id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
暁月臨(プロフ) - この作品大好きです!更新よろしくお願いします!!頑張って下さい!!! (6月18日 23時) (レス) @page20 id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
ミミ(プロフ) - きなこもちさん» 了解しました! (2021年11月11日 12時) (レス) id: 3c71f1d526 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - ミミさん» 私の端末が最近重くてボード開かないので、確認出来次第お返事します、すみませんm(_ _)m (2021年11月11日 0時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2021年9月23日 20時