past1 ページ24
・
『ふぅっ……ふっ……』
簡素な部屋に響くのは幼い少女の吐息。
息を激しく乱し、立っているのもやっとの様子だが彼女は決して倒れない。
未だ、指示が出ていないからだ。
〈207番、良くやった。試験は終了だ〉
少女の耳に取り付けられた無線機から、
その声を聞き、少女は一瞬安堵の表情を見せる。そして次の瞬間には力絶えた少女の身体は地面に吸い込まれるように傾れ込む。
『はぁっ……はぁ……』
苦しそうに息絶え絶えの少女の元に、少し時間が経って一人の青年が駆け寄ってくる。
「A…！！」
青年は少女に取り付けられたヘッドフォン型の無線機、そして少女の視界を奪っていたゴーグルをそっと外す。
『…にい、さん…？』
「A、大丈夫か？よく頑張ったな」
急に開けた視界、自身を抱きしめる存在にほんの少し驚いたように身を固くした少女───Aだが、相手が己が“兄さん”と慕う人物だとわかるとその表情を和らげ、その身体を委ねる。
『結果、は…？』
「うん。無事合格だよ。次はもっと難易度の高い
青年の言葉にAは頬を緩める。それはまるで無機質で何もない空間に、一輪の花が咲いたかのような笑みだった。
〈207番、今日の試験は終わりだ。部屋へ戻れ〉
青年は彼女の表情に気を取られるも、再び入る無線機からの声にハッと我に返ったように眉間に皺を寄せる。
「……帰ろう」
『わっ…兄さん…？』
ぐい、っとAの腕を引き強引に彼女を立ち上がらせた青年は早足で今し方入室した部屋を出て行こうとする。
『兄さん、私次も頑張るよ？だから…怒らないで』
「…ごめん、そんなつもりじゃなかった。……Aは、此処での生活、嫌じゃないのか？」
ほんの少し、怯えたように身体を震わせる少女に青年は膝を付き彼女と目線を合わせ、謝罪の言葉を口にする。そして問うのだ。
“この生活がつらくないのか”と。──少女の答えを知りながら。
『力を使った後はすごくつらいから試験は嫌い…。でも、それは私の将来のためなんでしょ？それに…私が試験に耐えたら兄さんの力になれるんでしょ？なら……私は頑張れるよ』
異能特務科にも知られていない、秘密異能訓練施設。
そこでは少年・少女達が“訓練・試験”と称し日々己の異能の強化・増長に努めていた。
───本当の目的も知らされずに
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1064人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
暁月臨(プロフ) - きなこもちさん» きなこもちさんのペースで頑張って下さい！！ 気長に待ってます！！(*≧∀≦*) (6月21日 21時) (
レス) id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 暁月臨さん» 暁月臨さん嬉しいお言葉ありがとうございます、更新止まり気味ですがそう言ってもらえるととても励みになります！頑張りますm(_ _)m (6月21日 18時) (レス) id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
暁月臨(プロフ) - この作品大好きです！更新よろしくお願いします！！頑張って下さい！！！ (6月18日 23時) (レス) @page20 id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
ミミ(プロフ) - きなこもちさん» 了解しました! (2021年11月11日 12時) (レス) id: 3c71f1d526 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - ミミさん» 私の端末が最近重くてボード開かないので、確認出来次第お返事します、すみませんm(_ _)m (2021年11月11日 0時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きなこもち | 作成日時：2021年9月23日 20時
