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episode49 ページ3






『……私、本当は三週間の休暇のはずだったんです。
何処へ行き何をしようか、色々考えてました。これでも一応は年頃の娘なので、流行にもそれなりに興味はあって。…いきなりの休暇撤回だなんて本当酷い話』



───そう思うでしょう、広津さん



運転席で、見事な運転技術を披露している広津さんに
同意を求めるようそう問えば、彼は「ええ、そうですね」と同情の乗った声色でそう返答してくる。
いつも通りの落ち着いた物腰であるが、ほんの一瞬彼の片眉がピクリと動いたのを見逃すほど私は優しくなどない。


『元上司に尻尾を振って現上司に不当労働を強いるとは、貴方も隅に置けない人ですね』

「……」


無言は肯定の意。
つまりはそういうことらしい。
彼は私ではなく奴を選んだのだ。


起きてしまったことはもう仕方がないし、私の休暇撤回はどうにもならない。
この絶対零度まで下がり切った車内で私と二人きりの広津さんはさぞ胃の痛む思いをしていることだろう。『でもまぁ、気持ちはわかります』とでも云えば彼の心労を和らげてあげられるかもしれない。






が、今の私にそんな大人な対応などできるはずもない






『……木偶の棒の話を樋口さんに伝えれば、必ずそれは龍之介の耳に入る。彼女は情報の出処なんて疑いもしないでしょうから、さぞ扱いやすかったでしょう。龍之介もご執心の人虎のネタであれば罠を考えずに飛び込んできてくれますからね』


ニコリと微笑めば広津さんは「申し訳ありません」と謝罪の言葉を述べてくるが、私が求めているのはそんなものではない。


『私がお聞きしたいは謝罪ではなく、“貴方が今どんな気持ちで私をヘリポートまで送り届けてくれているのか”ということです』

「……」


段々と顔色が悪くなっていく彼をみて、少しいじめすぎたかもしれないな、と思う。
今晩はぜひ、胃に優しいお粥あたりを口にしていただきたいものだ。



『……あ、ここら辺で結構です』



目的地付近に着き、そう声をかければ広津さんは車道の脇に車を停車させる。


「……ご武運を」

『私への命は“龍之介の回収”、それだけですが』

冷めた声色でそう返答すれば、広津さん顔を青白くさせる。
それは、追い詰められて今晩自害してしまいそうな勢いで。




『……冗談ですよ』


流石に可哀想なので、車の扉を閉める直前で車内に錠剤を投げ込んでやる。
即効性の、胃薬だ。



広津さんは、小さく笑って安堵の息を漏らした。

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暁月臨(プロフ) - きなこもちさん» きなこもちさんのペースで頑張って下さい!! 気長に待ってます!!(*≧∀≦*) (6月21日 21時) (レス) id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 暁月臨さん» 暁月臨さん嬉しいお言葉ありがとうございます、更新止まり気味ですがそう言ってもらえるととても励みになります!頑張りますm(_ _)m (6月21日 18時) (レス) id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
暁月臨(プロフ) - この作品大好きです!更新よろしくお願いします!!頑張って下さい!!! (6月18日 23時) (レス) @page20 id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
ミミ(プロフ) - きなこもちさん» 了解しました! (2021年11月11日 12時) (レス) id: 3c71f1d526 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - ミミさん» 私の端末が最近重くてボード開かないので、確認出来次第お返事します、すみませんm(_ _)m (2021年11月11日 0時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこもち | 作成日時:2021年9月23日 20時

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