episode66 ページ20
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私の残された有給休暇は一週間。
前二週間の休暇の中で、色々な事があったけれど全て水に流して。残りの時間は優雅にゆっくりと過ごそうと、そう決めていたのに。
『……何これ』
唐突に自室に現れた龍之介は、私に一つの荷物を寄越した。
差し出されたのは、厚みを帯びた封筒。そして、向けられた視線が疾くしろと私の行動を促している。
「太宰さんからの令で調べた情報だ。読め」
指図されるのは好きではない…し、休戦調停が結ばれていようが探偵社と馴れ合う気などない。けれど行動しなければ永遠に事が進まない気がして。
嫌味を含めて大きくため息をひとつ吐き、封筒内の資料に目を通す。
内容はたった一人の男の生い立ちから経歴、生き様の全てが記載されていた。だがそれ以上でもそれ以下でもなくただそれだけ。
『……孤児院の院長、ね。これが一体なんだって云うの』
「これを人虎に渡せと仰せつかった」
『そう、良かったね。でも私にとっては寧ろ虫唾の走る話なのだけれど。次から次へと、聞きたくもない名前ばかり』
「お前に、その役目を頼みたい」
『……龍之介の耳って、お飾りだったのね』
資料にある男のことなど、この手元ににある情報以外何も知らないが中島敦、という
態々休暇を潰してまで見たくもない、関わりたくもない奴のところまで足を赴き面倒ごとを被る程、私は善人ではない。
「Aは何故人虎を嫌う」
『それを龍之介が云うの』
「僕は、奴を恵まれた奴だと思っていた。…だが、違った」
『……だから?あのね、龍之介。私は龍之介が危機に陥るのならば手を貸すよ。だけど貴方が彼との戦闘や関わりの中で己が考えを改めようと、私には関係ない。……間違っても私情に巻き込まないで』
資料を封筒に入れ直し、龍之介に突き返す。自分が今どんな顔をしているのかなんてわからない。只、目の前の青年の憂いを帯びた表情と揺れた瞳が、私が彼の淡い期待を裏切ったのだと物語っていた。……誰もかれも、私に一体何を望んでいるのだろう。
「…時間を取ってすまない」
『こちらこそ、ご希望に添えなくてごめん』
珍しい龍之介の素直な謝罪になんだか罪悪感が湧いてくる。
とはいえ私の思考も行動も変化などしないけれど。
『……暫くは少し優しくしてあげようかな』
episode67→←episode65 ※ STORM BRINGERキャラ有
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暁月臨(プロフ) - きなこもちさん» きなこもちさんのペースで頑張って下さい!! 気長に待ってます!!(*≧∀≦*) (6月21日 21時) (レス) id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 暁月臨さん» 暁月臨さん嬉しいお言葉ありがとうございます、更新止まり気味ですがそう言ってもらえるととても励みになります!頑張りますm(_ _)m (6月21日 18時) (レス) id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
暁月臨(プロフ) - この作品大好きです!更新よろしくお願いします!!頑張って下さい!!! (6月18日 23時) (レス) @page20 id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
ミミ(プロフ) - きなこもちさん» 了解しました! (2021年11月11日 12時) (レス) id: 3c71f1d526 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - ミミさん» 私の端末が最近重くてボード開かないので、確認出来次第お返事します、すみませんm(_ _)m (2021年11月11日 0時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2021年9月23日 20時