検索窓
今日:7 hit、昨日:17 hit、合計:48,523 hit

episode57 ページ11





『…私は与えられた任務を遂行しただけです。結果としてそれが鏡花の道を切り開くことにはなったけれど、あの子のことは最初から別にどうでもよかったので礼を言われる筋合いなんてないですけど』


突き放す云い方をしても、太宰さんはニコリとその笑みを崩さない。
それがもはや不気味で、何か見透かされているようで
鳥肌が立つ前に彼から視線を逸らした。



「Aから見てあの二人はどうだった?」

『喧嘩の語彙力は貴方達(旧双黒)よりはありますね。内容もまぁ、少しは意味のあるものですし』

「……」

『といっても、相互理解は比較するまでもない。連携も全然取れていないし、信頼もない。それから個々の軟弱さも目立ちます』

「……そう」


欠点ばかり、どう足掻いたって彼等は互いを信用して闘う、なんてことできないだろう。
それなのに、太宰さんの目は幼子の成長を見守るかのように暖かい温度を灯していた。




『何故、そうまでして彼等を引き合わせたいんですか』

「間もなく来る“本当の厄災”に備える為だよ」


そんなの、貴方達で壊してくれればいいじゃないか。
今までそうしてきたように。



これ以上私の大切なものを、失わせないで。
思い出になんかさせないで。



溢れ出る思いは、どれも音になることはない。
生憎、私は真っ直ぐ自分の気持ちを伝えられるほどの器用さも素直さも持ち合わせてなどないし、
私の我儘を伝えるには、置かれている立場が離れすぎていた。


彼等を認められないのは、私自身だ。





「A……?」


ぐっと掌を握りしめて、踵を返す私の背に太宰さんが不思議そうに声をかけたけれど、『帰ります』とだけ言って彼から距離をとった。


これ以上、此処に居たくなかった。







完全に意識を飛ばしている龍之介を抱えて、歩みを進める。もう、太宰さんの顔は見なかった。




『酷い人。……龍之介もそう思うでしょう?』

背負った男にそう問うても、勿論返事などない。



……どんなに掻き乱されても、私の心は決まっている。
中也さんの為に尽くすことが、私の存在意義だ。



だから─────



『強く、ならなきゃ』









三社鼎立、これにて一件落着である。

episode58→←episode56



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (194 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1064人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

暁月臨(プロフ) - きなこもちさん» きなこもちさんのペースで頑張って下さい!! 気長に待ってます!!(*≧∀≦*) (6月21日 21時) (レス) id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 暁月臨さん» 暁月臨さん嬉しいお言葉ありがとうございます、更新止まり気味ですがそう言ってもらえるととても励みになります!頑張りますm(_ _)m (6月21日 18時) (レス) id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
暁月臨(プロフ) - この作品大好きです!更新よろしくお願いします!!頑張って下さい!!! (6月18日 23時) (レス) @page20 id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
ミミ(プロフ) - きなこもちさん» 了解しました! (2021年11月11日 12時) (レス) id: 3c71f1d526 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - ミミさん» 私の端末が最近重くてボード開かないので、確認出来次第お返事します、すみませんm(_ _)m (2021年11月11日 0時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:きなこもち | 作成日時:2021年9月23日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。