episode33 ページ35
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『今日も異常なし、ですか。やっぱり尻尾出さないですね』
遊郭に炭子、善子、猪子の三人をなんとか潜入させてから数日、宇髄天元及び茅ヶ崎Aは屋根上から“ときと屋”、“京極屋”、“荻本屋”を中心に観察するが、これといって得られる情報も特になく行き詰まりを感じていた。
「嫌ぁな感じはするが鬼の気配ははっきりしねぇ」
『…外から見て異常がなければ鬼は内側にいる。どうして夜に仕事のあるこの街を選んだんでしょうか』
「さぁな。ま、この街は人が居なくなっても足抜けか逃亡したと思われて捜索なんかされねぇんだろうよ」
宇髄もAも明言はしないものの、気配の隠し方の上手さから此処に巣食っている鬼が上弦の鬼であると予想していた。
「A、もし『最後まで付き合います』」
宇髄の言葉を遮るようにAが言葉を被せる。
『上弦の鬼だったとしても、帰りません。最後まで戦います』
Aの言葉に目を丸くさせ、宇髄はしばらく言葉を失ったように呆然としてAを凝視していた。
あまりにも長い時間そうされていたので、Aが『何ですか』と煩わしそうな視線を向ければ、「いや…」と宇髄はやっと言葉を返す。
「お前、冨岡みたく他人に興味ねぇ奴だと思ってたからよ」
『義勇はそういうわけで言ってるんじゃ…。……私は宇髄さんを信用してるんです。なので、宇髄さんの大切な人を守りたいと思うだけです』
「へぇ…そりゃ、どうも」
この僅か一日後、我妻善逸が行方不明となった。
「お前たちには悪いことをしたと思ってる。俺は嫁を助けたいが為にいくつもの判断を間違えた。お前らはもう“花街”から出ろ。階級が低すぎる」
「いいえ宇髄さん、俺たちは…!」
「恥じるな。生きてる奴が勝ちなんだ。機会を見誤るんじゃない」
炭治郎の言葉を遮り、炭治郎と伊之助にそう告げた宇髄は一人、花街の中心地へと姿を消してしまう。
『…私も此処に残る。でも、貴方達は宇髄さんの言う通りにして』
「Aさん…」
続いてAも彼らに退却命令を下す。
彼女は悲しそうな顔をする炭治郎を一瞥し、更に言葉を続けた。
『此処にいる鬼は上弦だった場合、貴方達じゃ対処が出来ない。…守り切るって約束もできないし下手したら足手纏い』
ピシャリと言い切ったAに、炭治郎は今度こそ返す言葉がなくなり俯く。
納得のいってなさそうな炭治郎と伊之助を置いて、Aもまた花街へと姿を消した。
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きなこもち(プロフ) - ひかるさん» 観閲ありがとうございます、とっても嬉しいです! (2022年5月8日 19時) (レス) @page50 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - すごく面白いです! (2022年5月8日 15時) (レス) @page25 id: 97f5eb0e61 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - いいさん» いいさん嬉しいお言葉ありがとうございますm(_ _)m。マイペース更新ですが頑張りますのでこれからも見ていただけたら嬉しいです! (2021年10月19日 15時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
いい - 一瞬で心鷲掴みにされました!応援してます!頑張ってください! (2021年10月17日 9時) (レス) @page47 id: ac051c4e24 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 凌雲さん» 嬉しいコメントありがとうございます!とても励みになりますm(_ _)m (2021年9月23日 10時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2020年4月5日 17時