episode11 ページ13
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『……どちら様ですか』
水柱邸の敷居内と外を区切る門の前。
良く晴れたある日、そこには敷居内から顔を出し突然の訪問者に訝し気な視線を送る茅ヶ崎Aと、敷居の外で己の目が信じられないというように目を見開く音柱と風柱の姿があった。
ことの発端は宇髄の好奇心だった。
偶然休日が被り、これまた偶然寄った甘味処で音柱と風柱が鉢合わせ、世間話に花を咲かせている最中に音柱である宇髄がポツリと言ったのだ。
「冨岡の継子が見てぇ」、と。
“水柱邸に、冨岡義勇の継子がいる”
風の噂で聞いた話だ。柱に継子がいることは不思議なことではない。この代に限っては曲者が多いのか継子がいない柱の方が圧倒的に多いが。
──では何故宇髄の好奇心が煽られたかといえば、その継子とやらは女で、水柱邸に隠を雇わず炊事洗濯を自ら行いつつ鬼狩りをする日々を送っている、という話を聞いたからであった。
「あの冨岡に尽くす奴が居るんだぜ?どんな奴か気にならねぇ?もしかして夜の方も尽く「やめろォ」」
茶を啜りながら不死川が宇髄の話を遮る。
同僚の、まして嫌いな部類に入る奴のそんな話は聞きたくない。そうでなくとも他人の
が、宇髄の好奇心はその程度で消えるほど弱くはない。
「そいつは強いらしい。なんでも、ド派手に下弦の鬼を一人で倒したことがあるんだってよ」
「そうかい、そりゃよかったなァ」
「が、冨岡と同じく愛想はあまり良くないらしいぜ。“能面”って異名があるらしい」
「死ぬ程興味がねェ」
「家事全般出来て、料理の腕もいい。お前さんが好きなあの老舗のおはぎ屋の店主顔負けの腕前らしいぜ」
「…………」
釣れたな、と宇髄は確信した。
まぁ最後のは若干盛ったが、料理の腕が格段に良いと聞いたのは事実だ。あくまで噂でだが。
「よし、そうと決まりゃ早速ド派手に突撃だ」
不死川の気持ちが変わらぬうちにと、宇髄は不死川を連れて足早に店を出る。
「…俺はどうでもいいけどなァ」
ぶつぶつと文句を言いつつも素直に付いてくるあたり、なんだかんだで不死川も冨岡の継子のことが気になりだしたのだろう。
「ま、自称“俺はお前たちとは違う”男の継子なら知っておいて損はねぇだろ!」
こうして二名の柱は意気揚々と水柱邸へと足を運んだのであった。
そして、冒頭に至るのである。
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きなこもち(プロフ) - ひかるさん» 観閲ありがとうございます、とっても嬉しいです! (2022年5月8日 19時) (レス) @page50 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - すごく面白いです! (2022年5月8日 15時) (レス) @page25 id: 97f5eb0e61 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - いいさん» いいさん嬉しいお言葉ありがとうございますm(_ _)m。マイペース更新ですが頑張りますのでこれからも見ていただけたら嬉しいです! (2021年10月19日 15時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
いい - 一瞬で心鷲掴みにされました!応援してます!頑張ってください! (2021年10月17日 9時) (レス) @page47 id: ac051c4e24 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 凌雲さん» 嬉しいコメントありがとうございます!とても励みになりますm(_ _)m (2021年9月23日 10時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2020年4月5日 17時