episode10 ページ12
・
二週間の静養生活を経て機能回復訓練が始まり、身体の感覚も使い方も、それなりに療養前と変わらぬようになってきて。
義勇が相手をしてくれる機能回復訓練は、蝶屋敷で行われているものを模したもので、柔軟・湯呑みの中身がぬるま湯の水ぶっかけ反射訓練・鬼ごっこによる全身訓練を行った。
ただ、蝶屋敷と少し違うのはそれに加えて竹刀による打ち込み・手合わせも行ったこと。
反射訓練で顔面に水をぶっかけられることはなく、湯呑みは必ず頭の上に置かれたこと。
屋外の鬼ごっこでは庭の木の枝を、打ち込み及び手合わせで竹刀を十数本に渡り折りまくったことだと思う。
木の枝に関しては無関心だった義勇も、竹刀が折れる度に調達に来てくれる隠には流石に申し訳なさそうな顔をしていた。
機能回復訓練は毎日昼間から夕方まで続いた。
最初の頃は一日中義勇と稽古できるのが単純に嬉しかったけれど。
最近は少し申し訳なさが込み上げてくる。
私は義勇との訓練が終われば一日が終わったも同然だけど、義勇は違う。
夜になれば担当区域への見回りへ行かなければならないし、任務が入ることだってある。
そうして朝方帰ってきては、また昼間から私の訓練に付き合わされるのだ。
「…休憩にする。集中が途切れていては怪我をする」
手合わせの最中、私の考えを見透かしたように義勇が訓練に制止をかけた。
義勇が入れてくれたお茶を片手に二人で縁側に腰掛ける。
『……ごめん』
ぽつりとそう言えば、「俺はそこまで柔じゃない」と言った義勇に相変わらずのぎこちない手つきで頭を撫でられる。やはり私の気持ちはお見通しのようだった。
「気にするな、休みはちゃんと取っている。それに、お前との手合わせは楽しい…」
『……!』
思わず義勇の方を見やると、彼は口角を上げ優しく微笑んでいた。
───誰彼構わず手合わせするのは好きではないし、極力剣は抜きたくない
いつだったか彼が言っていた言葉だ。
それを、打ち消す言葉を今貰えた。
義勇の体調が心配なのは本当だ。
けれど、こんなにも嬉しい言葉を貰ってしまったらどうしたって欲が出てしまう。
『…今日、手合わせ終わったら型も見てほしい』
「わかった」
ふっ、と小さく笑う義勇を見て。
少しだけ、胸が高鳴った
……ような気がした
504人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きなこもち(プロフ) - ひかるさん» 観閲ありがとうございます、とっても嬉しいです! (2022年5月8日 19時) (レス) @page50 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - すごく面白いです! (2022年5月8日 15時) (レス) @page25 id: 97f5eb0e61 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - いいさん» いいさん嬉しいお言葉ありがとうございますm(_ _)m。マイペース更新ですが頑張りますのでこれからも見ていただけたら嬉しいです! (2021年10月19日 15時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
いい - 一瞬で心鷲掴みにされました!応援してます!頑張ってください! (2021年10月17日 9時) (レス) @page47 id: ac051c4e24 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 凌雲さん» 嬉しいコメントありがとうございます!とても励みになりますm(_ _)m (2021年9月23日 10時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きなこもち | 作成日時:2020年4月5日 17時