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episode17 ページ19





『……鬼の住む、山?』

「隊士多数行方不明ー!柱モ動ク、Aモ行ク!」


鎹鴉から慌ただしい伝令を受けたのは、水柱邸から少し離れた街で任務を終えた翌日だった。


『わかった』




鎹鴉に連れられて目的の場所に着いた時には既に日は落ち、鬼の活動時間の真っ只中であった。




『……』






進行方向の少し右手側に鬼の気配を感じ、其方に足を運ぶと其処には少女の鬼がいた。それから、近くにある繭玉からまだ生きている人の気配もする。



「アンタも私の食糧よ!」

そう言って掌から糸を出す少女の攻撃を躱しつつ、なるほどあの繭玉はこの子が作ったのかと理解する。


『…さよなら』

素早く鬼の頸を斬ってから、繭玉も中の人が傷つかない様勢いを殺して斬る。
繭玉から出てきた人は、鬼の能力なのか隊服は身に纏っておらず、つまりは産まれた時と同じ状態であった。


『……』

相手は男性であるし、きっと今屈辱的な気持ちでいるだろうから、此処に長居すべきではない。
それに他にもまだ鬼の気配がする。それから妙な違和感もある。まさか、彼ら(・・)も此処に居るのだろうか。
それなら急がなければと踵を返したところで、腕に微かな衝撃を感じた。


視線を下にすれば、助けた男性に腕を掴まれている。
そして彼は必死の形相で「き、君っ、もしかしてAちゃん?」と問うてくる。

何故私の名前を知っているのか、今の自分の状況を分かっているのか、疑問は山ほどあったが、数秒彼の顔を凝視して、一つ目の疑問が消えた。



『…村田、さん?』


そうだ、彼は村田さんだ。
最終選別で怪我を負った義勇を助けてくれて、その後の療養でも何かと義勇を気にかけてくれた人。
そして、彼に守られた人───。


「…鬼殺隊に入ってたんだ」

『……はい』



そっか、となんとも言えない表情をする村田さんに何と返せば良いのかわからない。そもそも彼と会うのは八年振りだ。
とりあえず、自らの隊服の上着を差し出すと彼は少し不思議そうな顔をした。


『…義勇の同期の方なので。羽織は貸せませんが、何も無いよりはマシだと思います』

「あっ!!」


やっと自分の状況を理解したらしい村田さんは恥ずかしそうに上着を受け取ると、小さく縮こまり顔を伏せた。


『…では、また後程』



記憶の中の彼の方がよっぽど頼もしかったな、と思ったのは心の中に留めて、私は鬼の気配のする方へ足を進めた。

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きなこもち(プロフ) - ひかるさん» 観閲ありがとうございます、とっても嬉しいです! (2022年5月8日 19時) (レス) @page50 id: 869b2e483e (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - すごく面白いです! (2022年5月8日 15時) (レス) @page25 id: 97f5eb0e61 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - いいさん» いいさん嬉しいお言葉ありがとうございますm(_ _)m。マイペース更新ですが頑張りますのでこれからも見ていただけたら嬉しいです! (2021年10月19日 15時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)
いい - 一瞬で心鷲掴みにされました!応援してます!頑張ってください! (2021年10月17日 9時) (レス) @page47 id: ac051c4e24 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 凌雲さん» 嬉しいコメントありがとうございます!とても励みになりますm(_ _)m (2021年9月23日 10時) (レス) id: 8cb9599803 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこもち | 作成日時:2020年4月5日 17時

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