episode47 ページ49
・
「手前を信用して……“汚濁”を使ったんだ。ちゃんと俺を拠点まで…送り届けろよ……」
Aの能力で傷を癒すことは出来ても、激しい戦闘による疲労までは消すことは出来ない。
中原は、その言葉を最後にぱたりと地面に倒れ込み、すやすやと寝息を立て始める。
「任せなよ、相棒」
にこりと笑ってそんな中原の言葉を了承する太宰。
「信じられない…。あのラヴクラフトが……」
一部始終を目撃していたスタインペックが、驚きと困惑の表情でA、中原、太宰を見つめる。
「君達は一体……」
そう問うスタインペックに、太宰はニヤリと笑って「悪い奴の敵さ」と、短く答えた。
『……そういう訳なので』
徐にAがスタインペックに近づき、その手を再び彼の胸に当てる。
「君のこと、嫌いって言ったけどほんとは少し好きだったよ」
『…そうですか。私は嫌いですよ、貴方のこと』
そう云い終わると同時にAの異能が発動され、白い光が辺りを包む。
覚悟を決めたようにスタインペックが目を瞑った。
けれど、いつまで経ってもその身体が消えることはなかった。
「……あれ」
『私に消されるとでも思いました？』
驚きの声と共に目を丸くするスタインペックに、Aは悪戯っ子の様な笑みを向ける。
彼女が発動したのは治癒能力の方。彼を殺すどころか負っていた怪我を全て治していた。
『貴方のおかげで中也さんが無事だったので。…勿論二度目はないですけどね』
「……君は、どうして…」
『だって、貴方は──』
何かを云いかけたAだったが、その言葉の続きが音となることはなかった。
太宰が、背後からAに手刀を喰らわせ意識を失わせたのである。
「偽善臭いのは君の方じゃないか」
崩れ落ちるAの身体を軽々とその手に収めてから太宰はスタインペックに告げる。
「Aに免じて今回は見逃すけど、君がしたことを私は忘れてないからね。……勝手に組合に連れ去られちゃ困るんだ。この子には、ちゃんと居場所があるんだから」
じゃあね、とスタインペックに背を向けて歩き出す太宰。
「そういうことで、悪いけど中也。私の手はもう定員オーバーだ。まぁ、頑丈な中也なら一晩くらい野宿しても大丈夫でしょ」
代わりに、お姫様はちゃんと拠点に届けるよ
太宰の言葉に返事をする者は誰もいない。
それでも、彼は満足そうにその足を進めた。
一夜限りの双黒復活は、これにて幕引きである。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 770人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きなこもち(プロフ) - わたあめさん» ブックマンJr.放置していてすみません。最近自分でも迷走しててどこに突っ走っているのかわからなくなり放置状態にしてました。真逆更新待って下さる方がいるとは思わず・・・。でも、とても嬉しいお言葉です！頑張って今月中に更新します！！ (2017年8月17日 7時) (
レス) id: d6a64bf75c (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - ごめんなさい！生意気言って,,, (2017年8月16日 21時) (レス) id: 8f5f7e0649 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - ブックマンJrの少女も更新して欲しいです!! (2017年8月16日 21時) (レス) id: 8f5f7e0649 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 赤雲蒼雲さん» 赤雲さん、ありがとうございます！とっても励みになりました！！更新とってもノロノロですが、これからも面白いと思って頂けるよう頑張ります！ (2017年4月22日 19時) (レス) id: d6a64bf75c (このIDを非表示/違反報告)
赤雲蒼雲 - 面白かったです！更新頑張ってください！ (2017年4月17日 11時) (レス) id: 08e4520087 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きなこもち | 作成日時：2017年1月2日 21時
