中原中也に忠誠を誓った少女【文スト】

episode3 ページ5

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『嗚呼、頭が痛い…』


おまけにひどく吐き気までしてくる



その原因は河川敷からマフィアの拠点近くの裏路地まで柄にもなく全力疾走した所為だ
断じて川に流されたあの間抜けなる人物を目撃したからではない……と信じたい



未だ整わない息を落ち着かせようと大きく息を吸い込む



…真逆 マフィアが四年かけても探し出す事の出来なかった裏切り者が川に身を投げ出しているとは。



生憎 私にだって目の前で人が苦しんでいたら助けよう、と思う程度の良心はある。
但し それ故(ゆえ)面倒事に巻き込まれるのは御免なのだが



そして私は 空腹で餓死寸前そうな少年が自分の身を顧みず川へ飛び込み溺れている人物を抱えた時 全てを理解した



その人物が かつて敵組織を一夜で滅ぼし私の敬愛する人と共に“双黒”と呼ばれた元マフィアの五大幹部様こと太宰 治であり、その幹部様は単に川に溺れた訳ではなく自らの意志で川へ飛び込んだ ということを。



それらを理解した上で 現・マフィア所属の私が…そうでなくとも入水なんてする変人を救助する義理などない




『あ、そう云えば……』



あの彼は大丈夫なのだろうか


彼、とは勿論入水男ではなく空腹少年の方であるが

…まぁ、あの太宰さんが居るのだから彼が餓死する可能性は大方ないだろう
其れが彼にとって幸か不幸かは別として。



他人の心配が出来る位には落ち着きを取り戻している事に気がついた私は もう一度大きく息を吸い込んだ


『…帰ろ』




太宰さんを見た、という報告を首領(ボス)にしようかどうか迷ったけれど 止めておいた

報告した事で詳しく話を聞かれるのも面倒だったし、私にとっては割とどうでも良いことだし







河川敷で私が見かけた空腹少年の名は中島 敦
その正体は70億円もの懸賞金を懸けられた 最近ヨコハマを荒らしていると噂の人喰い虎


私がこの事実を知ったのは 彼と出会って2日後のことだった

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