中原中也に忠誠を誓った少女【文スト】

episode29 ページ31

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駅のホームでQに異能を発動させてから、二週間が過ぎた。


時間が経つのは早いもので、たった二週間、されど二週間。
何かあったのかと問われれば何もないし、けれど何も変わらなかったわけでもない。


強いて云えば、探偵社の人虎くんが組合に連れ去られ、泉鏡花は軍警に捕まったことくらいか。


『探偵社にとって、戦闘系の異能力者二人が戦線離脱状態なんてかなりの痛手。潰すなら今が狙い時だと思うんだけどなぁ』

残念ながら首領からの指示は何も出ていない。
まぁ私は探偵社に因縁がある訳でも社員の誰かに怨みがある訳でもないのでさして興味はない。

『する事がなくて、退屈…』

只、それだけ。



「僕も、仕事が終わるまで他の人で遊んじゃダメって森さんに云われちゃった。つまんないや」

『……そうね』


もうひとつ、残念なことと云えば 今現在もQの相手役を私が受け持っているということ

何故かやたらと私に懐いたQを見て、首領が慈悲もなく云い放ったのだ。“彼の面倒見役はAちゃんが適任だねぇ”と。


「人で遊べなくてつまらないのは本当だけど、僕はAさんと一緒にお出かけできてすごく楽しいよ」

『…それは、どうも』

キラキラと笑顔を向けながらそう云ってくれるのは嬉しいけれど、生憎私にとってQとのお出かけは本望ではないので胸が痛い。
どうやらQ自身もそれに気づいているらしく、“まぁAさんは僕より中也さんとのお出かけの方がいいだろうけど”、と笑顔のままで云うので『ご明察』とだけ云っておいた。



「…でも、僕がちゃんとお仕事できたらAさん僕とちゃんと遊んでくれる？」

『まぁ、いいけど』

そう答えれば、ニコリと今までで一番の笑顔を見せたQは服の袖を引っ張った。
己のでもなく、私のでもなく、隣の男の袖を。





「──だから、おじさん。遊んでよ」




Qが袖を掴んだ相手は、組合のラヴクラフトだった


「僕を楽しませてよ」

そう云うQに、ラヴクラフトは数秒考え込んでから触手…？で〈ダックスフンド〉を作ったのだが汚い、気持ち悪い、気味が悪いの3k揃い。


いや、それよりも。



何か違和感を感じた。
“何か”はわからないけれど、嫌な感じがするのだ


『Q、まって。関わらない方が…』

Qに向けた静止の言葉は最後まで続かなかった





「ごめんね。これも仕事の内なんだ」




薄れる意識の中、最後に聞こえたのは背後から聞いたことのある声とQの悲鳴だった

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