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episode.8 ページ9










投げた香水がタクミの背中にぶつかって、ゴトンと汚れたフローリングに落ちた。

細い廊下で起きた一部始終に夏油は一重の目をぱちぱちと瞬かせる。

先程まで子鹿のようにプルプルと震えていた少女が、肉食獣のようにギラギラと友人の彼氏を睨みつけているのだ。





「___最低な男。ナオに謝ってよ!」

「ってぇな、ふざけんなクソガキ。カッコつけてんじゃねぇよ!」

「ッ、アンタこそ彼氏なら最後までカッコつけなさいよ!それでも× × × ついてんの」

「、てめぇ!」





タクミは掴まれていた腕を振り払って、キッチンに干してあったお茶碗を彼女にぶん投げた。

飛んできたお茶碗が鈍い音を立てて、彼女のおでこにぶつかった。「いっ、」と額を抑える彼女にナオが駆け寄るが、それを気にせず少女は怒りに満ちた顔で男に掴みにかかった。


その勢いに夏油は思わず端に寄るが、顔を真っ赤にした彼女に足を踏まれる。



まさか修羅場になるとは。


タバコはキッチンに投げ捨てた。
夏油はどうどう、とタクミの髪を掴む少女を落ち着かそうと肩を抱きながら思った。


よく見ると、彼女の額からはドス黒い血が流れていた。しかし、それに臆することなく少女は叫び続ける。





「アンタなんか連れていかれて当然よ!二度とナオの前に現れないで!」






これ以上は収まらん。「さっさとソイツ持ってけ」と夏油が顎で支持すると、部下の2人はタクミを引きずって部屋を出た。

修羅場の2人は最後まで睨み合いながら、罵倒と共に中指を立て合った。


パタン、と硬い扉が閉まると、少女のふーふーという息切れだけが聞こえていた。



夏油は飢えたハイエナのような瞳を燃やす彼女にかける言葉を考えていた。


自由業をしている分、修羅場には当事者にも傍観者にも何度もなった。
金か、男か。修羅場の理由なんてそんなものだ。


だが、彼女は友人のために怒ったのだ。
あの恐怖の真ん中にいた少女は、可愛らしい顔をぐちゃぐちゃにして男を睨んでいた。



正直、見惚れた。






「おっと、」






ぷつん、と糸が切れたように少女は倒れた。

夏油がすかさず腰に腕を回したおかげで、床と衝突することはなかったが、ポタリと彼女の額から血液が落ちていた。


普通の女子高生に戻った少女は、ヤクザの腕の中で意識を飛ばしたのだった。







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もみの樹(プロフ) - ピさん» ありがとうございます!嬉しいです! (2021年7月30日 19時) (レス) id: e680850d36 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - さ、さいこうです、、 (2021年7月30日 14時) (レス) id: 324728c5bd (このIDを非表示/違反報告)
もみの樹(プロフ) - わらび餅の声さん» ありがとうございます!頑張ります! (2021年7月19日 1時) (レス) id: e680850d36 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅の声 - めちゃめちゃ好きです!応援してます!最後までついていきますッ! (2021年7月19日 0時) (レス) id: 720510a825 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もみの樹 | 作成日時:2021年7月18日 18時

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