悲劇のシンデレラ (ページ2)

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幼き頃の思い出ページ2

西暦‪✕‬‪✕‬‪✕‬‪✕‬年、人々は下劣な争いを始めた。
誰もが嘆き、誰もが憎んだこの世界で、たった1人の英雄が姿を現した。
その名も、灰かぶり姫「シンデレラ」。

ー西暦‪✕‬‪✕‬‪✕‬‪✕‬年ソルラルド王国スラム街にてー

青い空にぽっかり浮かぶ様々な雲。
それを彩るように飛ぶ鳥達。
今日も日常は変わらない。嗚呼、とっても素晴らしい！！

ここにはなんにもないけれど、空を見れば世界中の人々と繋がれる。なんて素晴らしいのかしら！！

私は今日も元気に走り回る。
他のみんなは迷惑そうに私を見るけど、そんなものは関係ない。
だって、せっかく生きているんだもの！！
今楽しまないで、いつ楽しむというの？！
そう、今！！この瞬間は今しかないの。
だから、私は楽しむの。
嗚呼、とっても楽しいわ！！

「相変わらずAは元気だな。」

Aというのは私の名前。
そして、先程私の名前を呼んだのは、兄。
名前は知らない。
だから私はお兄ちゃん、と呼んでいる。

「お兄ちゃん！！どうしたの？珍しいね！！」

そう、私の兄は滅多にこのスラム街へ姿を現すことは無い。
実は、私たちは実の兄弟では無いのだ。
だから、私は名前を知らない。

だって、お兄ちゃんは、上級国民「貴族」なんだから。

「お兄ちゃん！！お兄ちゃん！！」

私は飛び跳ねながらお兄ちゃんに抱きつく。
スラムに住む汚い子供に抱きつかれ、嫌な態度ひとつ取らないのは、きっとお兄ちゃんだけだろう。
だから、私はお兄ちゃんを満喫する。
これは、私だけの特権だから。

「あはは、Aは本当に可愛いなぁ。
ほーれ、うりうり〜。」

キャーと嬉しい悲鳴をあげれば。お兄ちゃんはもっと私を突っついてくる。

仕返しだァと言い、私もお兄ちゃんを突っつく。

嗚呼、幸せだ。

楽しい時間はずっと続かないのは知っている。
だけど、今この時間だけは、私に幸せをください。

ねぇ、神様。