25.反駁 ページ25
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フワッと淡い香水の匂いが鼻につく
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「ちょっ…」
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身体を離そうとしても、また引き戻される。
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シトラスの香りとともに蘇る、4年も前の思い出。
彼の腕の中の感覚を、身体はまだ覚えていた。
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潤「Aはいつもこうだ。優柔不断で、自分に自信が無くて…だから、流される。それで…結局、誰かに助けを求める。」
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どこか憂いを含む声で、私を捲し立てる。
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潤「その誰かはもう、俺じゃ無いはずだろ？」
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言葉とは裏腹に、抱きしめられる腕に力が入る。
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私は相も変わらず、沈黙を貫いているのに。
彼には、全てお見通しだ。
ここにきた理由も。私の気持ちも。
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ガチャ。
錠の外れる音が、リビングに静かに響く。
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私が事を理解して反射的に潤から離れる前に、「え…」という女性の声が聞こえてきた。
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○「潤！？」
勢いよく扉が空いて、陰湿なリビングの空気がふわっと揺れた。
女性ものの、甘い香水の香りが一気に広がる。
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○「なに…こ…」
目の前の光景を目の当たりにして
混乱と忿怒で掠れる声が私の心臓を抉る。
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潤「あーーー、そっか。今日だっけ？約束。」
潤は静かにそう言うと、私から身体を離して女性の方へと向かった。
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○「え、ねえ、この女だれ？どうしてここにいる…」
潤「ごめ、今日からもうここ来ないでくれる？」
○「は………？」
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潤「見てわかるでしょ？俺彼女いるし。」
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そう言って私に顔を向ける。
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○「彼女って…彼女は私でしょ？」
潤「何かの…勘違いじゃない？」
○「ひどい…」
潤「んじゃ、合鍵そこ置いてって。」
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目の前の知らない"2人"を見て
私の知ってる彼はもういないのだと気付く。
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○「そんなの…許さないから！」
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女性の甲高い声が私の鼓膜を刺激する。
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潤「邪魔。」
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意味まで一度も聞いたことないほどの潤の濁った太い声に、私だけでなくその女性もピタリ。と止まる。
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潤「ほら」
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潤は静かな笑顔を女性に向けて、リビングのドアを空け、促す。
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○「絶対、許さないから」
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憎しみを含んだ顔で、最後にそう言い残して女性は部屋を後にした。
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私は、目の前で繰り広げられた光景に呆気を取られて、最後まで気が付かなかった。
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女性の匂いが、二宮さんの家の、甘ったるい香水と同じだって事に＿＿＿＿＿＿。
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続く (更新停止中)
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作者名：星雪 x他1人 | 作成日時：2020年5月8日 1時
