21.虚偽の記憶 ページ21
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雅「なんてね」
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冗談だよ。と唇の端を上げて笑う。
時が、止まる。
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‥‥‥‥‥冗談？
どうして相葉さんがそんな冗談を…
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雅「ああいうの。」
目の前の大きいテレビに映された談笑をするカップルの姿。
を、煙草で指す細い相葉さんの指。
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雅「ああいうの見てるとさ。壊したくなるんだよね」
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細い、相葉さんの指の
左手の薬指の、指輪が。キラリと光る。
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雅「俺だけが壊れてるなんて。許せないでしょ」
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こんなにも残酷に、指輪は光るのか。
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「………どういう………」
やっと喉から出た私の声は酷く震えていて
それを聞いた相葉さんは笑いながら缶ビールをテーブルに置く。
雅「本当は2人がカフェで楽しそうに笑い合ってるのが憎くて仕方なかったよ。めちゃくちゃに壊してやりたかったの」
私の方を見て、「そんな顔しないでよ」と笑う相葉さんの瞳は
空っぽだ。‥‥‥‥空っぽなんだ。
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仕事帰りの翔が私のカフェに寄ってくれて
相葉さんの淹れた珈琲を飲んで
翔が美味しいって言ってましたよって私が笑って伝えて
2人は相変わらず仲良しだねって相葉さんが笑って。
‥‥‥‥‥‥そんな、昔の記憶が。
脳裏に浮かんで、すぐに消えてしまう。
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一番幸せだったあのときには
もう、戻れないんだ。
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雅「櫻井くんにAちゃんとホテル行くことを言ったのは俺だよ」
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やがて、消された煙草の火。
黒い灰。焦げた匂い。
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‥‥‥‥‥どうして。どうして私は。
私の目の前でだけ咥えるその煙草を見て
それだけで全てを知った気になって
‥‥‥今までこの人の何を見てきたんだろうか。
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作者名：星雪 x他1人 | 作成日時：2020年5月8日 1時
