15.翳りある過去 ページ15
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目を覚ますと、カーテンの隙間からくさびのような朝日がキラキラと差し込んでいた。
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「もう、あの部屋には行きたく無いな」
全身に染み付いた甘ったるい香水と煙草の匂いが不快で、身体を起こす。
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「いった……」
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二日酔いでこめかみが鈍く疼く。
冷蔵庫から水を取り出し、渇いた体に流し込む。
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今日が休日なことが幸いだった。
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昨日のことが全て嘘だったらいいのにという願いとは裏腹に、
上着を脱いだ時に落ちたレシートが、それを否定する。
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レシートを拾い、雑に書かれた数字を眺める。
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どれくらい時間が経っただろう
気がつくと西日が部屋の中に陰影を作っていた。
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徐ろに、スマホに手を伸ばす。
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11桁のキーを押すと、数秒の間を置いてコール音が始まった。
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スマホを握る手に力が入る。
ﾌﾟﾂ…
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「もしもし、白石で…「お客様がおかけになった電話番号は…」
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期待した私が馬鹿だったか…
と思いつつも、留守電にメッセージを残した。
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「もしもし白石です。頼みたいことがあるんですけど、今夜時間ありますか？9時に、駅前のーーーというお店で待ってます。」
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話したわけでは無いのに
今までの出来事が脳裏にべっとりとこびりつき、心臓が締め付けられる。
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○「いらっしゃいませ」
40代くらいの男性の落ち着いた声が店内に静かに響く。
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案内された席に座り、適当にカクテルを注文する。
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○「A」
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後ろから聞こえた声に、自然と体が引き寄せられる。
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「潤……」
久しぶりに読んだ名前は少しぎこちない。
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潤「なに？？」
優しく笑う彼は、昔と全然変わっていない。
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さり気なく私の隣に座り「ギムレットを」と颯と注文を済ませる。
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潤「んで？俺に頼みたいことって？」
潤の視線を肌で感じる。
久しぶりに会ったのに、まともに挨拶もない。
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「翔がね、1ヶ月前にね、死んだの。」
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潤「ふ〜ん。それで？」
頼んだカクテルを片手に、どこか遠くを見つめている。
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「それで？って……。なんか他に言うこと…」
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潤「なんか勘違いしてない？あの男は、俺からAを奪った奴だよ？」
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あの時と同じだ。
笑顔なのに、目の奥が笑っていない。
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ポケットから煙草を取り出す仕草を見て
彼も煙草を吸う人だったな、と忘れた記憶が蘇った。
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作者名：星雪 x他1人 | 作成日時：2020年5月8日 1時
