力を持つ者、殺戮喜劇の茶番祭 (ページ3)

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2.鴉と一緒に、帰りましょう。ページ3

何処かで希望を抱いていた。

頭の何処かで。

愚かにも、微かにも、希望を抱いていた。

見事にそれを裏切られてからもきっと、抱いている。

離すもんかと、がっしりと掴んで離せない希望があるのだ。

さて。

急に語り始めたお前は誰か、と問われる前に答えておこうか。

私は燈我紗津綺(ひがさつき)。

10代前半。

一部では【赤の縞馬】と呼ばれている。

正直ダサいと思っている名称だが仕方ない。

でもって。

誰だかは分かったけど何処にいるんだという質問の手紙が我が家に殺到しそうだから先に答えてしまおう。

ここは“殺人現場予定地”である。

そして私は“犯人予定人物”である。

では“被害者予定人物”は誰なのか。

そんなの知る必要は無い。

強いて言うのであれば【能力者】である。

まあ、私もれっきとした(皮肉にも、であるが)能力者である。

能力者が能力者を殺す。

或いは狩る。

また或いは喰らう。

そこから、何時しか私達は共喰い(カニバリズム)と呼ばれるようになった。

詳しくは、正にまさしく企業秘密であるので言えないが、まあ、一人ではない。

「ではでは…燈我紗津綺、出動ですか………」

誰に言うでもなく、ぽつりと呟いた。

「今日の噴水は綺麗ですかね…」

ふふっ…と薄く笑い、後ろにいることも気付いてくれない鈍感で鈍い相手に画鋲を刺す。

たらりと血が流れた頃にようやく気付く相手にとびきりの笑顔を見せる。

「今日のテーマパークは、鴉が鳴き始める時間に閉園です。もうとっくに過ぎていますよ？」

お決まりの台詞を言い、傷口の血に触れる。

「鴉と一緒に、帰りましょう」

【血鬼上等】緋梅雨

その時。

血の噴水が吹き出た。

「あまり綺麗では無いですね…高望みが過ぎますか」

私は吐き捨てるように言い、その場を去った。

「さてさて、私も鴉と一緒に、帰りましょう」

軽い足取りで、我が家へと向かう。

愛しい兄弟たちに、会うために。

日常は、消えない。