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ねぇ、と師である宮舘に同意を求めた。
「ラウールは強くなったよ、深澤」
過度に言葉を紡ぐことなく一言。
独特な声色と間、揺らぐことの無い水面のように落ち着いた特有の雰囲気に呑まれる。
「岩本さんと舘さんが言うんならいーんじゃない」
「ホント!?やったーー!!」
これからするのはほぼ殺し合いだと言うのに、遊園地に行くことが決まった子供のようなはしゃぎよう。
「お前マジで変わってんな」
渡辺に言われたくないだろう。
「そう?僕は早く蓮くんの役に立ちたいだけだよ」
光が消えた。
目黒の話をする時、ラウールはここではないどこか遠いところを見る。
誰も踏み込めない、天真爛漫な末っ子のその領域。
「じゃあ岩本さん、ここにいる6人と佐久間で」
「あぁ、今夜だ。」
ラウールを一瞥した深澤が瞬時に空気を切り替える。
『了解/りょーかい』
岩本の一声に百合組の息の揃った返事。
佐久間に電話する、とひと足先に退出した向井。
「照、お嬢はどうするの?」
「大丈夫でしょ、阿部も目黒もいるし」
楽観的、というよりも、お嬢に対しての興味がまるで見えないような深澤の言い方。
「俺は残った方が良いんじゃないかな?」
「叩くなら徹底的にだ、小さな組織だろうと、俺たちに手を出したことを後悔させる。そのためにはお前らが必要だ」
宮舘の申し出を岩本は一刀両断。
「……分かったよ」
岩本にはまだお嬢の夢の話を通していない。
お嬢の存在が割れている、明らかに内部犯の可能性が高い。
ならば、ここでわざと弱みを見せるような話をするべきでは無いのだろう。
それに、
宮舘は、スカウトされたその時から深澤のことを初めからあまり信用していない。
「涼太、行くぞ」
「えっ」
高そうな時計のついた手首を掴み、扉に引っ張ろうとする。あまり見ない強引な渡辺に動揺。
「喧嘩は終わりだ、俺はAを守る。お前もそう。それで良いだろ」
火が、着いたのだろう。
過保護な渡辺はお嬢の身が危ぶまれることを何よりも嫌う。
今彼の頭は、 喧嘩のことなんて忘れて
ぜってぇ、ぶっ潰す
それだけでいっぱいだった。
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霞(プロフ) - takkimakkiさん» 嬉しいコメントありがとうございます!これからも素敵な百合組お届けできるように頑張ります! (2023年1月2日 23時) (レス) id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)
霞(プロフ) - まなみんさん» コメントありがとうございます!励みになります( ¨̮ ) (2023年1月2日 23時) (レス) @page30 id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)
takkimakki(プロフ) - すごく好きなお話です。ころからも楽しみにしています!!百合組、素敵です。 (2022年12月29日 10時) (レス) @page34 id: ff744b84c3 (このIDを非表示/違反報告)
まなみん(プロフ) - 続きが気になります!無理せず更新頑張って下さい! (2022年12月11日 8時) (レス) id: 5b5d40fc7f (このIDを非表示/違反報告)
霞(プロフ) - 雪姫さん» ありがとうございます!マイペースですが、更新頑張ります。 (2022年12月5日 0時) (レス) id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霞 | 作成日時:2022年11月30日 1時