叶わない25 ページ31
打ち合わせのオフィスまで、さすがに二人で行く訳には行かないから、少しだけ時間をずらしてオフィスに向かった。
『…少し心細い…周りベテランさんばっかりだし…』
意を決してオフィスの中へ入っていくと、久し振りな人が私に手を振っていた。
『あ、!フジに……フジさん!』
危ない危ない…フジ兄ちゃんなんて呼びそうになった!
フジ 「何て呼べばいいかな?」
フジ兄ちゃんがこっそりと私に耳打ちする。
わ、近い……、良い香りがする……
『あ、え…月白と』
ただ苗字を少し文字っただけの簡易な名前を口にする。
ま、言葉にしたら同じなんだけど。
フジ 「おっけ、」
相変わらずのグラサンとマスクだけど、にこりと微笑んでくれたのが分かる。
あぁ、落ち着く。
知り合いがいるっていいな……
フジ 「月白ちゃん、俺のバンドメンバー紹介するね」
わ、わくバンの皆さん…!出るんだ…!
『ど、どうしよう…真逆本物に会えると思ってなかったので、えと、緊張しちゃって…!』
私の半分気持ち悪い反応に皆さん笑ってくれて、自己紹介も済ませ、一緒に打ち合わせ場所に向かっていると、
「久し振り、でも無いか。キヨに聞いて驚いたわ」
この低いイケボの知り合いは一人しかいない。
ばっと振り返ると、そこにはいつもの四人組がいた。
フジ 「お、うっしー」
牛沢 「よお、フジ。月白」
キヨ兄、言っててくれたんだ…ありがとうございます
『どうもうっしーさん』
キヨ 「うっしー、こんなとこでナンパすんなって。若い子困らすんじゃねーよ」
レトルト 「ほんとに。俺たちの株も下げないでよねー」
ガッチマン 「ごめんね、月白ちゃん」
『いえいえ、』
牛沢 「いや、俺そんなつもりじゃねぇんだけど」
キヨ 「はい、連行しまーす」
あとの三人はうっしーさんを連行して先に会場に向かっていく。
すれ違った瞬間、皆さんにこっと笑いかけてくれて、思わずぺこりとお辞儀をする。
そしてキヨ兄は口パクで“きをつけろ”と言いながら顔をしかめて見せてから、笑った。
私も、“ごめんなさい”と口パクで言ってから、笑い返した。
それを一瞬のうちに終わらせ、私も会場へ向かう。
少し危ない打ち合わせ初日だった。
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蘇澳(プロフ) - けろさん» コメントありがとうございます!とても励みになりました!お目に入れて頂き光栄です!これからも更新がんぱりますので宜しくお願いします^^ (2019年8月30日 16時) (レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)
けろ(プロフ) - 初めまして!毎回更新を楽しみにしています(^^)居候生活編も楽しみに待ってます笑小説書くのは大変だと思いますが応援しています! (2019年8月30日 12時) (レス) id: 2aaeade905 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蘇澳 | 作成日時:2019年8月12日 23時