ベテルギウスの泣く頃に。S (ページ35)

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Aside

「さあね、見当もつかない」

正直に告げて、今度は中に戻ろうと歩き出すとヒロトは無言であとをついてきた。

建物の中に入り、廊下を右に行こうとすると腕を掴まれる。

「お前の部屋そっちじゃねえよ」

そのままグイッと強めに腕を引きながら廊下を左に進んでいく。

ふと掴まれている自分の、傷だらけの腕と傷一つないヒロトの白い腕を見比べてしまう。

こんな傷だらけになってまで私は父親を取り戻したいのか？本当に今歩もうとしている道は正しいのか？なんて考えが過ぎってしまう。

「ここだ」

「………ありがとう」

ヒロトは案内を終えると、ぱっと手を離して一人で歩き始めてしまう。少しだけ迷いが生じていた私は思わず、「ねえ！」と呼び止めた。

「どうして何も聞かないの？………言いたいこと、聞きたいこと、問い詰めたいことだらけだろうにどうして」

足を止めたヒロトはこちらを振り返る事無く、淡々と答える。

「今はまだその時じゃねえだろ。それに、俺は本当のお前を信じてる」

「………本当の私ってなに……………？」

残された私の疑問に答えること無く、または声が小さすぎて聞こえなかったか。ヒロトは去ってしまった。

少しの間そこに立ち尽くし、私は部屋の中に入った。