･ ページ33
ヒロトside
翌朝、明後日にはロシアとの試合が控えているというのに誰が呼び掛けるともなく全員がAの元に集まっていた。
救護室で監督とセキヤさんに見守られて一夜を過ごしたAは既に起床していて、ボーッと窓の外を眺めていた。
「………A」
キャプテンである円堂さんが声を掛けると、ゆっくりとこちらを振り返った。
「お前の事情は一星に全部聞いた。…………オリオンで何があったんだ？その傷は……………」
「これ、は………………」
円堂さんの問いにAは長い睫毛を伏せ、目をそらす。
Aの皮膚を覆い尽さんばかりの数多の青アザは、人の暴力によるものだと一目瞭然だ。その経緯を、酷ではあるが本人に聞きたいというのがここにいる全員の総意だった。
「お父さんにやられたんだよね」
「の、野坂さん」
痺れを切らしたらしい野坂の声に西蔭が小声で止めに入るが、野坂は聞かない。
「君の容態から察するに、失踪していた三日間ずっと軟禁されていて最低限の水と食料しか与えられなかった＿＿＿＿。それと、ずっと隠している左手の甲、そこには何があるのかな？」
Aの目が見開いて、図星である事が読み取れる。
一星の話じゃ、コイツは父親にオリオンに売られた。売られた後はあのいけ好かないロシアの奴が庇ってたらしいって話だったか。
最初はロシアの…………フロイが裏切ったのかと思ったがどうもそうじゃないらしい。
「……………野坂さんの言う通り、これは父にやられました。」
「っ………ただの虐待じゃねぇか」
思わず口を挟むが、Aは首を振って「私が役立たずなのが悪い」と言う。
「野坂さんは何でもお見通しなんですね。…………見て下さい、これが私の決意です」
Aは右手で覆っていた左手の甲をこちらに向けた。
「……………！？」
一番大きな反応を見せたのは一星だった。
「これがオリオンの刻印です。色は違いますが形は一星の踝にあるものと同じのはずです」
刻印の選手、オリオンの使徒、オリオンの刻印……………そしてAの決意。
「…………おい、お前の決意って、まさか」
Aはただ、全てを諦めたように笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 50人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：るぴゃん x他1人 | 作成日時：2020年3月18日 8時
