ベテルギウスの泣く頃に。S (ページ30)

今日:4 hit、昨日:29 hit、合計:20,722 hit

新たな刻印ページ30

Noside

「ごめんなさい…………ごめんなさい…………」

少女の悲痛な叫びと鈍い音が木霊するとある一室。

「……………真一さま、イリーナさまがお呼びです」

「わかった」

真一はAの首を締めていた手を放すと、ゆったりした足取りで部屋を後にした。

Aがオリオンに来てからというものの、この一室にずっと軟禁されていた。最低限の水と食料を与えられ、トイレは備え付け。ベッドもあるが、ボロの木製ベッドに申し訳程度の布切れ一枚が敷かれているだけで床とさして変わらない。

そして、たまに父である真一がストレス発散という名の振りかざしにくる。Aの体内時計が未だ狂っていなければ、ここに閉じ込められて三日は経過している。

この三日で身体のあちこちに痣が出来てしまったし、体は鈍っているだろうし、三日とはいえまともな食事をしていないから痩せたかもしれない。

虚ろな目でベッドの上に無造作に置かれた水のペットボトルを手に取る。中に入ってる残り僅かの水を飲み干すと、ペットボトルを握りつぶす。

狭くて暗い、まるで監獄のようなこの部屋に果たしていつまで閉じ込められるのか。

ガチャっと控えめな音で扉が開いて、いつも食事を運んでくる黒服とは違う黒服がやって来た。

「来い」

Aはペットボトルをベッドに置いて、言われるがままついて行った。

長い廊下の先には、何か研究室のような部屋があって真一とイリーナが待っていた。

「………………来たわね。始めましょう」