デート ページ26
Aside
私たちが訪れたのは、ロシア連邦・タタールスタン共和国の首都カザン。
ロシア語名に沿った名称はカザニというとか。
そんなカザニにある公園でフロイとベンチに座り、ピロシキを頬張っていた。
「美味しい？」
「うん、美味しいよ」
ちらりとフロイの持つ紙袋に目をやる。
あの中にはピロシキ以外にもまだまだ食べ物が入っている、さっき連れ回されてこの目で確認したのだから。
連れ回されたと言っても、フロイは常に口を動かして私が退屈しないようにしてくれたり、「疲れてない？」とか気遣ってくれたり…………まるでデートだ。
今こうして一緒にピロシキを食べている瞬間も、ほぼずっと喋っている。それでも下品な感じは全くせず、不快な気持ちにもならない、不思議だ。
「次はシャシリク！これは羊かな？いい匂いだ」
紙袋から焼き鳥のような、串刺しにされた肉を取り出してフロイは笑う。
「Aはどれがいい？豚、牛、羊………鶏にチョウザメなんかも買ってみたよ！」
「チョウザメ…………？面白そうだけど私は豚でいいよ」
「オーケー！じゃあ僕はチョウザメにしてみよかな」
フロイから受け取ったシャシリクという食べ物を受け取り、思わず嗅いでしまう。
至って普通のステーキのような……………？
ふと突然静かになったフロイの方に目を向けると、それはもう美味しそうにシャシリクを貪っていた。
「………ついてる」
「え？」
ポケットティッシュを取り出して一枚だけ取り、フロイの口端についてたタレを拭う。
ぽかんとした顔からみるみるうちに笑顔に変わっていく。
「ありがとう、A」
本当にコロコロと表情が変わって見ていて飽きないな、フロイは。
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作者名：るぴゃん x他1人 | 作成日時：2020年3月18日 8時
