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Aside
「アイツも丸くなっちまったよなぁ………」
「…………あの、中に戻りません？ちょっと寒いです」
船体と上甲板を繋ぐ通路で私は腕を摩る。
夏ならともかく、春真っ只中のこの季節にこの時間、ノースリーブの薄いドレスではかなり寒い。
「これでも羽織っとけ」
と不動さんがスーツを投げるものだから、慌ててそれを受け止める。
「あ、ありがとうございます」
「不動さんとAさん！探しましたよ、もうすぐ世界大会の組み合わせ抽選が始まりますから中に！」
不動さんに借りたスーツを羽織って戻ると、ちょうどグループ決めの発表の場面だった。
日本はグループA、初戦の対戦国はスペイン…………私たちが宿舎にやって来たばかりの時に全員を相手にして見せたクラリオのいるスペイン。
「アメリカとロシアも同じグループA………」
ロシア…………フロイの率いるチームだ。
それに加えて優勝候補筆頭のスペインが初戦の相手、最初から熾烈極まりない戦いになりそうである。
尤も、私がその戦いに日本代表として参加出来るかどうかは怪しいけれども。
でも父さんがそれを望むのなら、応えるだけ。自分の意志などどうでも良い、意志を持つだけ無駄だ。
「………A大丈夫？気分が悪いのか？」
顔が険しいけど、と光に声をかけられて眉間にシワが寄っていた事に気がつく。
「ああ…………慣れない空気でちょっと疲れただけだよ」
「それならいいけど………」
「やあ、一星くんと柊くん。二人ともすっかり日本代表に馴染んでいるようで安心したよ」
聞き覚えのある声に、私は素早く振り返る。
光もまた警戒心剥き出しでその相手を睨みつける。
「他の失敗した選手と同じように、俺を排除しに来たんですか？」
「そんな事はしないよ。君のことはすまないと思っている………」
新条琢磨、ギリカナンの側近の男だが何を考えているのかイマイチ掴めない。
少なくとも信頼に足る人物では無い事は確か、そもそも私はこれ以降父さんの言う事だけ聞いてればいい。
そう判断してその場を離れようとすると、何者かに力強く肩を押され、ドレスだったせいもありバランスを崩してよろける。
「A！」
光の声が聞こえ、何者かが新条であると即時に理解した。
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作者名：るぴゃん x他1人 | 作成日時：2020年3月18日 8時
