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Aside
二点リードを許したまま前半戦が終了した頃、私はキリキリと胃が痛んで仕方なかった。
「…………久藤コーチ。体調が優れないので後半は外して貰っていいですか」
久藤コーチはこちらを一瞥して、「構わん」とだけ言う。
手洗いに行ってくると言い残し、フィールドを後にした。
何故こんなにも胃が痛むのだろう、腹は弱い方ではないし食だってマネージャーが管理してくれているから問題無いはずだ。
「A」
ふと、自分の名前を呼ばれて顔を上げた。
黒い髪に、私と同じ赤い瞳を持ったスーツ姿の男性を見て息を呑み、瞳孔がかっ開く。
目の前にいる男性は紛れも無い、血の繋がった実の父親だった。
「父さん…………どうして、ロシアにいるんじゃ」
「お前がちゃんとやっているか気になって様子を見に来たんだ。…………A」
目を閉じ、しばらくの間があった後冷えきった瞳で私を射貫く。
「お前にはガッカリだよ。第一試合で負けるはずだった日本がこんな決勝まで…………もし日本が勝ったらどうするつもりだ？」
「ご、めんなさい…………ちゃんとやるから…………」
「…………まあここで日本が勝ったところで次で負かせばいい。私はそれよりお前が一向にオリオンに従わない事の方が気になるな。パパの言う事が聞けないのか？」
「……………」
「聞けねぇのかって言ってんだよ！」
淡々と喋っていた口調を突然荒らげ、頭の先から足の先まで恐怖が満ちていく。
恐怖で口も動かず、ただ立ち尽くしていると大袈裟な溜め息が耳に入る。
大股で歩く父の足音に、昔の光景がフラッシュバックする。
そのフラッシュバックと重なるように、私の頬を思いっきり引っ叩いた。
次いで拳が振るわれるが、その拳は私ではなく壁に当たる。
「…………ユニフォームは半袖ハーフパンツ。殴ったら痣が見えるな。今日のところはこれで許してやる、感謝しろ」
「はい」
反射的に震える声で答えると、父の気配が遠ざかっていく。
足を引きずり、壁を伝いながらトイレの個室に入った。
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作者名：るぴゃん x他1人 | 作成日時：2020年3月18日 8時
