ちょっと監督 ページ13
Aside
今日の中国戦、勝てば日本代表は世界に羽ばたける……………。
代表としては嬉しいが、私個人としては負けて欲しいという願いも少しだけあった。
「さ、出発だ」
「待て」
バスに乗り込もうとする私たちを止めたのは、久遠コーチだった。
「監督からお前たちに重要なメッセージを預かっている」
つくしさんの持つタブレットに映像が映し出される。
映像内の監督は、病院のベッドに運ばれていてこう語っていた。�爐�しりの穴からキノコが生えるという奇病の緊急手術を受けなくてはいけない。だから、今日の試合は皆さんにお任せします�瓩函�
これは監督なりの仮病という事になるが、大事な今日の試合を監督抜きで戦うということを意味する。
大丈夫だろうか、相手にはこちらが五人がかりでも歯が立たなかったリ・ハオがいる。
この一戦がどう転がっても、私にとっていい事はないのだが。
「…………ねぇ、やっぱりAの事情もみんなに話そうよ」
バスに乗るなり、小声でそんな事を言い出した光に目を見張る。
「どうしたの、藪から棒に」
「私の事情って…………どこからどこまで？」
「全部だよ。もしかしたら、このチームなら…………Aも救えるかもしれない。きっと力を貸してくれる。Aの意に反して使徒をやらされそうなのも食い止められる！」
何も答えずに黙っていると、光はまくし立てるように続ける。
「俺たちには従ったら報酬を貰えるという明確なメリットがあった。でも、Aには何も無い…………そんな状況でオリオンに従ってたらAが」
「もういいの。全部受け入れたから」
私が言い放つと同時にバスは止まり、スタジアムにつく。
光の顔を見ることなく、さっさとバスを降りた。
光の言葉の続き…………それは��Aが壊れちゃう�瓩世蹐Α�如何にも言いそうだ。
自分が売られたと気が付いた時から覚悟していたこと、諦めていたこと。
今更足掻いたって、無駄。
何か手段があったとしても当事者である私が変わろうという気がないのならば、それもまた無駄。
「…………もう遅いの」
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作者名：るぴゃん x他1人 | 作成日時：2020年3月18日 8時
