帰還 ページ42
Aside
野坂さんの登場により、日本は凄まじい追い上げを見せて勝利した。
思い返しても美しいプレイだった、尊敬に値する。
野坂さんのプレイを思い出しながら少しぼーっとしながら廊下を歩いていると、お取り込み中だった。
「とぼけるな！」
「ああ、そういえば後になって気がついたんだけど持ってきたチョコマーブルを君のロッカーに入れちゃってたみたいで。でも、何故か僕のロッカーから出てきたんだよなあ」
と野坂さんは態とらしく笑う。
一星が思いっきり睨み付けるのにも構わず、野坂さんは「チョコマーブル食べる？」と挑発する。
「今回は完敗？」
野坂さんの背中をワナワナと震えながら睨む一星に声を掛ける。
野坂さんに向けていた鋭い眼光をこちらに向けると、私の襟を掴みあげてきて今にも殴り掛かってきそうな仕草をとる。
「貴様……………！」
「誤解しないで、私は何もしてないから」
「くそっ！」
完全に出し抜かれたのが余程悔しかったようで、拳を振り上げた。
「おい！何してる！」
着替えを終えてやって来た、一星と野坂さんを除く全員がこの修羅場を視認する。
「……………！」
一星は私を投げるように突き飛ばすと、足早に去っていった。
突き飛ばされて尻もちを着いた私に、真っ先に駆け寄ってきた風丸さんが手を差し出してくれる。
「大丈夫か？殴られてないか？」
「あ…………はい、大丈夫です」
「試合で活躍したからAちゃんにも手を出したって事かな？」
「女子にまで手を上げるなんて…………」
怒っている様子の吹雪さんと風丸さんに対し、私がちょっと煽ったのが悪いとは言えず。
一星が、女子に暴力を振るったただの最低クズ野郎になってしまった。
「あ、んまり一星の事悪く言わないで下さい」
「お前………円堂並のお人好しだな」
いや…………一星は事情が事情だし…………？
それと一応幼なじみのよしみというか、とりあえず一星の事ばかりを責めるのは気が引ける。
悪いのは全部オリオンなのにな。
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作者名：くつる | 作成日時：2020年3月15日 3時
