落ちた汚れは取れぬまま ページ20
× × ×
『どうしたらお前は自分を思い出せる？』
｢さあ？、寝て起きたら思い出してるとかねェ？｣
んな馬鹿な。ロシアの家に行ってからというもの。
前以上にぼんやりとしたままのソイツを肘でつついてみる。
しかし無反応。心做しか瞳の濁りが増したきり何も変化は無い。
…ヤケに変だ。
その日の夜、エニグマは私の部屋のベッドで寝ていた。
何でこんなことに…、と思ったが、やけに幼く瞳にはキラキラと輝くハイライトが皮肉にも美しく、一人終わっていない分の仕事をする事でエニグマを放置した。
｢ねえ、クレトニア…君は凄いよ。僕、気づいたんだ。何の目的で君が存在するのか、分かる気がする｣
『ちょっと待ちなよ…それってどういう、』
どういう意味だ、そう聞きたかった。でも、その瞳は有無を言わさず、ただ真っ直ぐと前を見ていた。
｢もし、僕が君みたいな国なら…、皆は僕を、｣
認めてくれたのかな_____。
『何か言った？』
｢ううん、何でもーっ！！君が夜更かしのし過ぎで過労死しないかなって！！｣
『うるせ、余計なお世話だ馬鹿』
そう言ってまた書類と向き合うクレトニア。
彼女は、僕とは違う。曖昧な記憶の中で、ドロドロとした黒いものが心を蝕んでいた。きっと、記憶が戻ろうものなら…。
いや、今はまだ気づかないフリをしよう。僕は道化のエニグマ。＿＿＿ヴェスタンメールではない、エニグマでいたかった。
ああ、またダメだ。
また僕は、何かを失った。
＿＿
＿＿＿＿＿＿
｢え？今日何かあったの｣
朝起きた時のこと。やけに辺りがバタバタしているなと思って外に出てみた。すると、変に畏まった衣装をしているクレトニア。あれ、頭でも打ったのかな。
気になって近くにいた給仕のお姉さんに尋ねてみると、今日はドイツ連邦共和国が来るとか何とか。
大切な貿易での話を国同士でやるんだってさ。
｢エニグマ様は行っちゃいけませんよ、祖国様もこの頃は大変なのでねえ。
代わりと言っては何ですが、余り物で焼いたクッキーでも如何です？｣
｢ありがとうお姉さん、分かったよ。僕ここにいる｣
お姉さんだなんて歳じゃないですよと笑ってクッキーを差し出してきたが、そうは思えない。
またまた、聞くところには彼には兄がいるらしい。
それは一目見てみたいな。
｢Aちゃーんっ！！俺様が来たぜー！！｣
『っえ、』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 41人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
RYP！(プロフ) - シエスタしてもねむい伊領さん» 初コメントありがとうございます。マジですか、クレトニアちゃん好きですか！今作あまり名前で呼ばれないのがアレですが、ぼちぼち更新頑張りますので今後ともよろしくお願いします(=ヮ=)ڡ (10月15日 10時) (
レス) id: 4d2d529cd2 (このIDを非表示/違反報告)
シエスタしてもねむい伊領(プロフ) - 初コメ失礼しま〜す ずっと昔から見てたんですけどやっとコメント出来ました！ クレトニアちゃんみたいな主人公大好きです！これからの展開が楽しみです！ (10月9日 17時) (レス) @page27 id: 12535c160c (このIDを非表示/違反報告)
RYP！(プロフ) - あざざめさん» コメントありがとうございます。更新頻度が亀よりもゆったりですが、クレトニアちゃんとお国さん達をこれからもよろしくお願いします^^ (10月1日 17時) (レス) @page27 id: 4d2d529cd2 (このIDを非表示/違反報告)
あざざめ(プロフ) - 初コメ失礼します！結構昔から読ませていただいていました。設定から文章の書き方、話の流れ、全てが面白くて大好きです！ヘタリアのシリーズ物が少ない中で見つけた当時はとても感動していました笑笑 (9月24日 16時) (レス) @page25 id: 6b5cfcbae8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：RYP！ | 作成日時：2023年7月28日 1時
