漢気溢れる男の子 ページ23
水瀬ひなこ「う……。ふああ〜〜あ。」
僅かな障子の隙間から漏れる光が眩しくて、ふと目が覚めた。
大きく背伸びして、勢いをつけて置き上がれば、隣にいるはずの加州が既にいない。
(あれ。どこいったんだろ。)
隣で起きたら物音で気づきそうなものなのに、全然気づかなかった。
(よっぽど疲れてたんだな、私。)
もしくは、加州が私を気づかって忍者のごとく部屋からでたのか…。
想像したら健気すぎてちょっと面白い。
そんなこと考えながら、私はいつのまに置かれていたのかわからない、着物と袴にさっと着替えて、とりあえず洗面所に向かった。
鯉が漂う大きな池がある庭を横目に木張りの長い廊下を進んでいるうちに、なんだかいい匂いがしてくる。
ご飯のいい匂いだ。
洗面所への通り道に台所があるため、私はちらっと覗いてみる。
水瀬ひなこ「あれ、加州?」
そこには着物の袖をたくしあげ、鍋をまわす加州の姿があった。
加州「あ、起きたんだ。おはよ。」
水瀬ひなこ「お、おはよ。」
びっくりしてつい駆け寄ると、鍋にはちゃんとしたお味噌汁が湯気をたてていた。
隣の釜からはぷくぷくと白い泡があふれ、魚まで焼かれている。
水瀬ひなこ「まさか、加州、朝ごはんつくってくれてたの?」
あまりの感動と衝撃でつい興奮してしまう。
加州「うん。まあね。…うまくできたかはわかんないけど。」
このクオリティで自信なさげな加州に私はもう褒め言葉という褒め言葉をかけた。
水瀬ひなこ「いやいや、すっごくいい匂いするし、絶対おいしいよ！昨日顕現したばかりでもう朝ごはんつくれちゃうなんて、加州すごい!天才!」
わっしょいわっしょいと一人もりあがってれば、加州は私のひたいをコツンと軽くはじいた。
水瀬ひなこ「わっ。」
加州「わかったから。…ほら、もうすぐできるし、早く顔洗ってきなよ。」
見れば加州の顔はほんのり赤くなってる。
お？お？照れ隠しか?
水瀬ひなこ「うん!」
私は小突かれたにもかかわらず、加州の反応ににやにやしてしまいながら、洗面所に駆けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：PANANA | 作成日時：2020年12月19日 8時
