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一章『出会いは最悪』 ページ2




妹の禰豆子が鬼になり、鱗滝さんのところでお世話になってから早一年。今日も俺は『最終選別』を受けるため厳しい修行に耐える。禰豆子はあれから寝たっきりで起きる気配もなし。

いつものように空中に向かって素振りをしていると「そろそろAが帰ってくるな」と、鱗滝さんが小さく呟いた。

「つかぬ事をお聞きします、が!その、Aさんっ、って人は、どんな、人なんで、すかッ!!」
「そうだな。一言で言うとあいつは−−−」

俺の質問に対し鱗滝さんが返事を返そうとしたその時、誰かが玄関を開ける音と、かすかに甘いにおいが漂ってきた。

「久しぶりー師範、頼まれてたもの買ってきたよ」
「随分遅かったな」
「道中可愛い女の子に会っちゃってさぁ」
「はぁ…全くお前と言う奴は」

失礼だが一言で言うと鱗滝さんの弟子とは思えないほどのんびりとした声をしていた。唯一といえばひょっとこのお面をしているところくらいだろうか。

Aさんは鱗滝さんに向けていた面をぐるりと横に向けると、急に嬉しそうなにおいを出しながら俺の手を握りしめた。

「わあ!君が師範のところに居候してる子だね?」
「い、居候…」
「金魚の糞みたいだって聞いたよ〜」
「金魚の糞っ!?」
(は、話が通じないぞこの人)

急に『居候』『金魚の糞』と言われて驚く。合ってるのは合ってるんだが、いきなり初対面でそれはないんじゃないか。鱗滝さんも呆れたように肩をすくめている。

「アハハ 急に金魚の糞は良くなかったね。ごめんよ炭三郎クン、悪気はないんだ。ほんとだよ?」
「炭治郎ですっ!」

首を傾げて言うAさん。仕草こそ優しいのだがひょっとこのお面をかぶっているせいで台無しだ。………この人は今まであった中でもひときわ個性の強い人かもしれない。

「A、しばらくこいつに稽古をつけてやれ」
「どうして?」
「帰ってきたんだ。それくらいはしろ」
「だって。よろしくね、炭治郎クン」
(不安だ……)

すぐに頭の中に不安がよぎった。禰豆子、お兄ちゃん頑張るからな………


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作者名:アンヘル | 作成日時:2019年10月4日 9時

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