私の仕事は声優業【下野 紘】

３２話目 ページ38

紘「那月は、それでいいの？」

「うん。だって、もう決めたことだから

それにー…
早く孫の顔を紘さんの家族に見せたい」

ニコリと笑えば、持っていたマグカップを置き那月をギュッと抱きしめる

紘「そうね。那月の家族の所にも行かないとな」

「ん…ありがとっ」


それから2ヶ月が過ぎようとしていた頃
那月と下野の忙しい日々が始まっていたのだ

那月は残りの仕事をこなしながら、今後のスケジュール調整。

下野も同様、なるべく傍に入れるようあちこちにマネージャーと駆け回っていた


「森崎さん一旦休憩ですー」


安「お疲れ、顔色悪いけど大丈夫？」

「安元さん…お疲れ様です。大丈夫ですよー
昨日寝不足で…」

代「仮眠とったら？まだ時間あるでしょ」

「代永さんこそ、目の下に隈できてますよー」

つんつんと脇腹をつつくと、「無理しちゃ駄目だからね」と頭を撫でられる

…お母さんだ。と心の中で思ったのは隠しておこう


でも、ここ最近体調が悪いのは確かで。
吐き気や倦怠感が酷い

まさか…とは思いながらも、残りの仕事に没頭した

そんなある日


午後の仕事が休みになり、家で横になっていると
インターホンが鳴った


「お邪魔しまーす！」

「急にくるなんて聞いてない」

真「まぁまぁw

それより、プリン買ってきたから食べよ！」

ソファに座り、いそいそと箱を開け始める真礼にクスリと笑ってしまった

「紅茶でいい？」

真「うん！」



真「那月、最近具合悪いんだって？
雄馬が仕事で一緒になったんだけど、って心配してたよ」

「んー…その事なんだけどさ…」

那月は引き出しを開け、それを取り出すと照れたように見せる
青い線がくっきりと現れていた


「多分、妊娠した…」

真「ほんと!?おめでとうー!!!」

「まだ確証じゃないから、今度産婦人科行こうと思って」

真「下野さんには？」

「…今度の休み、記念日なんだ」

真「良いと思うよ！

私も協力するから、困った事があったらなんでも言ってね」


真礼を見送ってから一時間が経った
また、インターホンが鳴った

いつも通り、何気なくカメラを覗くと目眩がしたかのように目の前が回った

あの日の男が立っていた

2ヶ月間、何も無かったから安心しきっていた

「ﾂｯ…！(早くどこか行って…！)」

那月は祈るように目を閉じる
すると、いつの間にかその男は消えていた

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