私の仕事は声優業【下野 紘】

２２話目 ページ24

「…夢、見たの」

紘「夢？」

「両親の、夢…だから、急に寂しくなって…
でも、紘さん、忙しいから…迷惑かけたくなくて…だから、寂しいって言えなくて…ッ」

何言ってんの私。語彙力どこ行ったのさ

紘「そっか…。」

私の手から器をとると、それを机に置き
その流れのまま、包み込むように私を抱きしめてくれた

紘「迷惑なんて幾らでもかけろよ。
…確かに、仕事放り投げる事はできないけど…

でも、今日みたいにすぐ帰ってくるから」

本当は、目を覚ました時に彼の顔が写った瞬間
泣きたかった
その我慢していた涙が、一気に溢れた

子どもをあやす様に頭を撫で、その暖かい腕の中でまた眠ってしまった

紘「…(そういえば、そろそろ墓参りいかないとだなぁ。ご両親と…祖父母の所も。…ご挨拶できてないし)」

「ん…」

那月は腕の中で可愛い吐息を立てて寝ている
顔にかかった前髪を払えば、その手を取り自分の頬に当てた

熱のせいで少し子どもっぽくなっていて、紅潮する頬に潤んだ瞳。そして、甘えてくる姿

紘「はァ…寝込みは襲えないぃ…っ」


俺、頑張ったと思う。


ーーーーーー

具合も良くなり、いつも通り仕事を開始した
今日は雑誌の撮影と、テレビ出演

カシャカシャと連続してなる音と、フラッシュ

「いいよー。そのまま少し目線下げてみよう」

休憩も入れて、4時間の撮影が続いた


次に収録現場へ向かい、楽屋に入る
すると、よくテレビで見かける方たちが挨拶に訪れた


『今日は今大人気のゲストが来てくれました！

声優でもあり、アーティスト活動、モデルとしても活躍している

森崎 那月さんです！』

『こんばんは〜！宜しくお願いしますー！』

収録が進み、いい感じのまま撮影が終わった
帰り際、ファンだと言う芸能人さんたちにサインをし車に乗った


立「明日、オーディションの打ち合わせあるから早めに現場入ってね」

「はーい。」

立川さんに家まで送って貰い、バックの中から鍵を探しているとガチャりと扉が開いた

紘「おかえり」

「あれ、今日早いね」

紘「そーなのよ。って言っても、夜に収録あるんだけどね」

荷物をおろし、ソファに腰をおろすとキッチンではお湯の沸く音が聞こえる

紘「コーヒーでいい？」

「ありがと〜」

数分後カップを二つ持ち、片方をテーブルに置くと那月の隣に座った

紘「今週の土曜、俺ら休みだよね？」

「うん」

紘「墓参り行こうか」

「…え？」

紘「挨拶、させて」

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