私の仕事は声優業【下野 紘】

２０話目 ページ22

ある程度トークが進むと、モニタースピーカーに
『巻いてください』の文字が

紘「え、俺ここ残っていいの？」

「もういいんじゃない？」

そういうと、「「きゃーっ！」」とまた歓声が


「それじゃぁラストいきましょう！」

背後から聞こえるドラムの音に合わせ、すぅっと
息を吸い込む



ステージの端へ移動しながら歌っていると、
紘さんが肩に腕を回す

隣へ顔を向けると、大好きな笑顔で笑った

「今日は絶対に忘れられない、とても素敵な誕生日になりました！

下野さんも、ここにいる皆も

本当にありがとうー！！！」


打ち上げ前に汗を流したく、私たちは一度家へ戻った

玄関を開け中に入ると、リビングでチョイチョイと手招きをされる


「どしたの？」

紘「来てきて」


ニコニコと、無邪気な子どものように私の腕を引いた



紘「これ、シラフでいるうちに渡したくて」

「？」

少し小さめな袋の中には、可愛らしくリボンで包まれた箱


紘「本当は、今日の朝一で渡したかったんだけど…」

「！…これ」

紘「貸して」

私の右手を取ると、薬指に指輪を填めた



紘「今は右手だけど、いずれ…ね(ﾆｺｯ」

そして左手の薬指にキスをした

頭で理解が追いつかず、指輪と紘さんの顔を何度も見る。あ、そういうことか。と理解した頃には、涙が溢れ出していた

「うぅ〜っ…」

紘「え、ごめん！やだった!?」

「ありがとう〜っ！」

ぎゅっと紘さんの腰周りに腕を回し、抱きついた


紘「ん。お誕生日、おめでとう那月」


居酒屋へと向かい中に入れば、スタッフやバンドメンバーに泣き腫らした目について心配された


そういえば、紘さんの薬指にも同じ指輪があったな

…今度、無くさないようにチェーン買いに行こう


後日、那月と下野の付けているネックレスが
お揃いの指輪だと知れ渡り、『結婚した？』『婚約？』などとネット上で噂されているようだ

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