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誰も居ねェ夜道で、自身の心臓辺りに手を当てながら独りごちる。
自然と口から溜め息が漏れた。
「あいつの所為で、俺まで病気になっちまったじゃねーか。どうしてくれるんでィ、シャボン女…」
俺の病気は、下手すりゃあいつのそれよりずっと厄介なモノ。
一度
ただ一人のことばかり考えて、他のことなんざろくに手ェ付かなくなっちまう。
…いわゆる、恋煩いだ。
―「ありがとね、総悟!」―
―「うっわ、総悟テレビゲーム強すぎ!くっそ〜、もう1回!」―
―「へ〜、お団子ってこんな美味しいんだね!病院じゃ出ないし売店にも無いから、全然食べること無くってさー。持ってきてくれてありがと!」―
病気でいつ死ぬかもわかんねー身で、あいつはいつも笑ってる。
作り笑いなんかじゃなく、ホントに嬉しそうに笑うんだ。
まるでツラいことなんざ、何一つとしてねェみたいに。
その笑顔を護りてェと思っちまったのはいつからだったか。
気付けばいつの間にか、俺ァすっかりあの女に惚れ込んじまってたわけだ。
「柄でもねーだろィ、この俺が恋の病に
貴重な非番をあいつの為に使ってやんのも、それを不快に思わねェのも全部これの所為。
姉上や近藤さん以外の為に動くなんざ、今までの俺ならまず考えらんねーことだ。
「……そろそろ仕事すっか」
ここ最近は、ずっとあいつのとこに居て色々サボり過ぎた。
下手すりゃ土方に折角の非番を取り上げられかねない。
そうなったら、あいつとゆっくりデートするどころの話じゃなくなっちまう。
…いつの間にかAと出かける=デート、なんて勝手な解釈を脳内で繰り広げてた自分にちょっと引いた。
けどきっと恋っつーのはそういうモンなんだろう。
自分を無理矢理納得させて、俺は屯所への道を急いだ。
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作者名:影咲 遥 | 作成日時:2017年12月4日 22時