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「……ハァ、仕方ねーな。これでも一応おまわりさんなんでねィ、送ってってやるから感謝しろィ」
「え、ホントに!?すっごい助かるよ、ありがとう総悟!!」
またこの笑顔だ。
こいつ、笑う時ホントに嬉しそうに笑いやがる。
それを見る度に、何故か暴れ出す俺の心臓。
いったい俺ァどうしちまったんだか。
「ほれ、この場に放置プレイされたくなかったらとっととぶち撒けた物拾いやがれ」
「あ、うん!ゴメン、ちょっと待っててね」
マジで地面を這いずるように移動しながら、袋から飛び散った物を拾うA。
身に纏ってる空色の着物はすっかり土で汚れちまってた。
再び俺の口から溜め息が漏れる。
仕方なく、その辺に落ちてる物を拾うのを手伝ってやったわけだが…
「…おい、何でィこりゃ」
「え、洗剤」
「何で入院生活に洗剤が必要なんでィ」
「シャボン玉の材料にするから。そのメーカーの洗剤が一番割れにくいシャボン液作れるんだよね〜」
袋ん中に入ってたのは、同じ銘柄の洗剤が数本と洗濯のり。
それに砂糖と蜂蜜。
明らかに入院生活に必要ねェモンばっかりだった。
聞けばこれ全部、シャボン玉の材料なんだと。
…どんだけ好きなんでィ、シャボン玉。
「んじゃ、とっとと行くぜィ。背中乗れ」
「はーい、お邪魔します」
屈んで背中向けてやると、Aは俺の首に腕を回して背中に乗ってきた。
だが。
「……軽ィ」
「ん、何か言った?」
「…いーや、別に」
背負い上げたこいつは、ホントに人間背負ってんのかって疑いたくなるレベルで…軽かった。
落ちねェようにと首に回されてる腕も、まるでゴボウみてェに細い。
「お前、ちゃんと飯食ってんの?」
「ごはん?食べてるよ、病院食だから味薄くて美味しくないけどねー」
「…そーかィ」
見た感じ元気だから忘れそうになるが、こいつも何かの病気持ってて入院してんだ。
この軽さも細さも、その所為なのかもしれねェ。
思い出される、死ぬ間際の姉上の細くなっちまった腕。
無性に胸が痛くなって、俺はそれ以上何も言わずただ病院を目指して歩いた。
「…総悟?」
俺の名前を呼ぶAの声にも、聞こえねェフリをして。
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作者名:影咲 遥 | 作成日時:2017年12月4日 22時