増えていく表情 ページ8
「確かにAちゃんは俺達の仲間を傷付けたかもしれん。だがそれは総悟も言った通り、Aちゃんの意思でやったわけじゃねーんだ。Aちゃんが気に病む必要は無いんだよ。それにAちゃんはこれまでずっと、俺達のことを護ってくれていたじゃないか!」
「近藤様…」
「お前が来てから、隊士の負傷が著しく減った。それは間違いなく、お前が俺達を護ってくれてることの証明だ。贖罪ならもう十分果たしてんだろ、これ以上負い目なんざ感じなくて良い」
「土方様…」
どーやら近藤さんも土方も俺と思ってるこたァ同じだったらしい。
土方と同じっつーのはちと癪だが…Aにとっちゃ、俺以外にも自分を受け入れてくれる存在が居るってのは救いの筈だ。
今回ばかりは許してやろう。
「これでわかったろィ。確かにてめーは俺らの仲間を殺した。だがその罪を償えるだけのことを、てめーはもうやってんだ。余計な気ィ回してんじゃねーや。てめーの役割はクソ野郎共の八つ当たりに付き合うことじゃねーだろィ。てめーはてめーのやり方で、真選組護ってくれりゃそれで良い」
「総悟様…ありがとうございます。近藤様も、土方様も…」
そう言って笑ったAの顔があんまりにも綺麗で、不覚にも一瞬胸がドキリと音を立てる。
…最初は全くの無表情だったってのに、いつの間にか表情豊かになりやがって。
見た目はもう、普通の女と殆ど変わんねェじゃねーか。
こいつがからくりだって感覚が次第に薄れていく。
それがどれだけ危険なことか、俺は何もわかっちゃいなかった。
66人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:影咲 遥 | 作成日時:2019年12月2日 12時