受け入れる覚悟 ページ26
「3日後、儂の工房にAを迎えに来ておくれ」
あの後中田さんはそう言い残して、Aを連れて帰っていった。
今日が約束した、Aを迎えに行く日だ。
これから俺が逢うのは記憶も思い出も、何もかもが消えさったまっさらな"A"。
この3日間でその"A"を受け入れるだけの覚悟は決めた。
思い出が消えたんなら、もう一度作り直せばいい。
俺の所為で死なせちまったAが戻ってくるんなら、それ以上を望むのは贅沢ってモンだろう。
中田さんから貰った名刺を元に辿り着いた
此処に、Aが居る。
もう一度Aに逢える。
気持ちを落ち着けるために数回深呼吸して、俺は倉庫の扉に手をかけた。
「お邪魔しやす、中田さん」
「待っていたよ、沖田くん。沙夜はこっちに居る、ついて来なさい」
中田さんに出迎えられ、工房の奥へと足を踏み入れる。
中には今にも動き出しそうな人型のからくりが数多く飾られていた。
そいつらは凄く大事にされてんだろう、どれを見ても埃一つ被っちゃいねェ。
そんなからくりだらけの工房の最奥に、あいつは居た。
俺の部屋に居た時と同じように、目を閉じて座ってる。
違いと言えば、真新しい着物が着せられてることくれェか。
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作者名:影咲 遥 | 作成日時:2019年12月2日 12時