交わす誓い ページ25
再び頭を下げようとしたら、おっさん…中田さんの手でそれは止められた。
「もう十分だよ、沖田くん。Aは儂が責任を持って直そう」
「……!ありがとうございやす…!!」
「ただし、この状態の"月読"を直すには壊れた核を取り換えるしかない。"月読"のデータは全て核に保存されている。それを取り換えるということは、全てのデータが初期化されるということだ。見た目は同じでも、以前と全く同じ"A"は戻って来ないだろう。それでも君は、"A"の修理を望むかい?」
ズキリと胸が痛んだ。
今まで共に過ごした"A"は、もう戻って来ねェ。
体は同じでも、俺との思い出は…記憶は存在しねーまっさらな"A"。
ショックは受けた。
けど、俺の気持ちは…意思は変わらねェ。
「惚れた女が記憶喪失になったくれーで見捨てる男が何処に居るんですかィ。例え記憶が無くなったとしても、AはAでさァ」
「…その言葉が聞ければ十分だよ。君がAの主人になってくれて、本当に良かった」
その時の中田さんは確かに、父親の顔をしていた。
例えからくりであっても、Aはこの人にとって本当の娘のような存在なんだ。
二度とAは傷付けねェ。
心ん中でもう一度、そう強く誓った。
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作者名:影咲 遥 | 作成日時:2019年12月2日 12時