【銀魂】惚れたあいつはゆる医者さん【沖田総悟】

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「……なぁ、さっきの…その……」


聞きてェのは、さっきのキスの理由。
だけど俺の口はそれを上手く言葉として出しちゃくれねェ。
キスって単語すら口にできねー程純情なつもりは無かったが、惚れた女からのそれは流石に不意打ち過ぎた。


「何?」

「…えっと……キ、キ…」

「あ、キス?」

「ッ……」


俺が言うことを躊躇ってた単語は、Aの口からあっさりと紡ぎ出された。
いつも通りの無表情で、意識してんのが俺だけなんだと思い知らされる。
これで頬に赤みでも差してたらまだ希望の一つも持てただろうに。


…いや、んなモン持っちゃいけねーのか。
希望なんて芽生えさせたら余計に帰りたくなくなっちまうだけなのだから。


「袋の、代わり。でも、ホントは、良くない。口塞ぐ、やり方。後のが、正しい、対処法。でも指示、通らなそうだった。だから、ちょっとだけ、やった。気に、障ったなら、ゴメン」

「……や、別に……」


此処まで聞いて、やっとAの意図が理解できた。
てっきり過呼吸起こしてパニックみてーになってた俺の意識を自分に向けさせて落ち着かせようとしたんだと思ったが、実際はもっと単純な理由だった。


過呼吸の時は袋を口に当てて、自分が吐き出した二酸化炭素を吸い込んで呼吸を整えるとか聞いたことがあるが、Aはそれを自分の口で代用してやったらしい。
その方法自体は正しいモンじゃねーらしいけど。

…まぁ考えてみりゃ、この鈍感女に俺の気持ちを利用するなんて真似できるわきゃねーか。


「ハーブティー、淹れる。リラックス効果、あるから」

「…おぅ、頼まァ」


そう言ってAが出ていった扉を何となく眺める。
…あいつは、もし目の前に俺と同じように過呼吸起こしてパニックになった野郎が居たら…


「誰にでも、あんな風にキスすんのか…」


頭によぎったそんな気持ち悪ィ思考を強引に振り払って、シャワーを浴びに行くべく俺も部屋を出た。

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