55章 ページ8
…確かにあの日私は、気付けば春雨の船の中に捕らえられていた。
翠狼族の力でも逃げ出せないように、厳重に枷をかけられて。
いつの間にそんな風にされたのかなんて全くわからないまま、檻に入れられて鎖で繋がれていた。
幾ら私が翠狼族の中でも弱い方だったからといって、他人の気配やにおいに気付けない程鈍くはない。
だがもし兄上の言うことが全て事実だと言うのならば…私が全く気付かないまま攫われたことにも、説明がつく。
「……それじゃ、私は…本当に……」
「だからそう言ってんだろーが。…で、てめーが逃げた所為で代わりに差し出されたのが俺だ。てめーらのガキ二人とも、我が身可愛さに売っ払うようなクソ親だったんだよ俺らの親は!!」
「いッ…!?」
後ろから髪を掴まれて、そのまま強くコンクリの地面に叩き付けられる。
頭が激しく痛んで、視界がグラリと揺れた。
生暖かいモノが、顔を伝っていくような不快な感覚。
これ頭から血も出たな…なんて意識がぼんやりし始めた頭で他人事のように考えた。
「ま、んな簡単に売られてやる俺じゃねーがな。逆に父上も母上も絞めて連中に差し出してやったよ。今頃どっかの星で強制労働させられてるか、皮ひん剥かれてくたばってるかのどっちかだろ」
「あぐッ…!!」
腕を背中で縛り上げられて、お腹を思いっきり蹴飛ばされた。
口の中に血の味が広がって、あまりの痛みに思わず呻き声が漏れる。
「で、俺は春雨に迎え入れられた。今はまだ下っ端だが、翠狼族3匹取っ捕まえて差し出せば幹部に引き上げるってんでこうしてわざわざ逃げたてめーを取っ捕まえに来たってわけだ。あっさり捕まってくれて助かったぜ」
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影咲 遥(プロフ) - 天藍さん» 天藍様、コメントを頂きありがとうございます!あわわわ、この短期間で2周もしてくださったんですか!?ありがとうございますとても嬉しいです。お気に召して頂けたようで何よりです、是非他の作品も読んでやってくださいませ! (2018年4月18日 18時) (レス) id: d73cf733f9 (このIDを非表示/違反報告)
天藍(プロフ) - 完結おめでとうございます!これ、すっっっっっっごく好きです!昨日見つけてからもう2周しました!この小説に出てくるキャラも、作者さんも、大好きです! (2018年4月18日 18時) (レス) id: 1e59b8b255 (このIDを非表示/違反報告)
影咲 遥(プロフ) - 夜空さん» 夜空様、神作だなんて恐れ多いですが、そんな風に思って頂けてとても嬉しいです!まさかお兄ちゃんのことも好きになってくださるとは、何と心の広い…きっとどこかで彼も幸せになることでしょう。そんなお話も書けたら良いなぁ…。コメントありがとうございました! (2018年4月16日 0時) (レス) id: d73cf733f9 (このIDを非表示/違反報告)
夜空 - 完結、おめでとうございます!!何という神作…。夢主ちゃんのお兄ちゃんも私的には結構好きだな。この作品では敵キャラですけど、彼にも色々あったんでしょうね…。彼も含めて皆、幸せになってくれることを願います。素晴らしい作品をありがとうございました! (2018年4月16日 0時) (レス) id: dc393f385a (このIDを非表示/違反報告)
影咲 遥(プロフ) - 夜空 星月さん» 星月様、顔面崩壊させてしまい申し訳ありません(笑)物語として語られない部分で、きっと沖田君が夢主ちゃんを幸せにしてくれる筈です!…ドSながらに。こういったコメントを頂けると、このお話を書いて本当に良かったなと思えます。コメントありがとうございました! (2018年4月15日 16時) (レス) id: 6088c20e27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:影咲 遥 | 作成日時:2018年3月30日 12時