76章 ページ29
「好きだ。お前が故郷に帰る妨げになっちまうと思ってずっと言えなかったが…もう自分じゃどうしようもねーくらいに、お前のこと…誰よりも、愛してるんでィ」
半化けして鋭敏になった聴覚が、自分の物ではない心臓の鼓動を拾ってきた。
口だけなら幾らだって嘘はつけるけど、不随意で動く心臓は体中のどこよりも正直だ。
あぁ、本当に
そう実感すると同時に、私の心臓も再び、マスターに負けないくらいに大きな鼓動を打ち鳴らし始めた。
恋愛感情なんて、経験したことの無い私にとっては未知の領域だけど…きっとこの胸の高鳴りは、心を満たす温かさは…きっと、そういうことなんだろう。
「…ま、命令なんて言い方したが無理強いするつもりはねーよ。お前が嫌がることしてェわけじゃねーし。ただ俺がそう思ってるっつーことだけ、頭に置いといてくれりゃ今はそれで良い。…絶対落としてやっから、覚悟しとけ」
私を抱きしめていた腕が離れていく。
それが何だか酷く寂しくて、今度は私がマスターの背に腕を回した。
「ッ…!おい、A…お前……」
「…うっさい。察しろ馬鹿マスター…」
多分、いや絶対今私の顔は真っ赤だ。
それをマスターに見られたくなくて、抱き付いたまま顔をマスターの服に埋める。
この行為自体凄く恥ずかしいけど、今マスターに顔を見られるよりはきっとマシな筈だ。
「……Yesと取るぜ、告白の返事」
「…勝手にしなよ」
「もう離すつもりねーけど…良いんだな?」
「アンタが言ったんでしょ、一生飼ってくれるって。隣、私にくれるって…自分が言ったことくらい責任持てっつーの」
可愛くないことを言ってる自覚はある。
でも、私には恥ずかしすぎてこれが精一杯だ。
マスターの顔は見えない。
だけどほんの少しだけ、狼の耳でなければ聞こえないくらい微かに。
「…あぁ、ちゃんと責任取ってやらァ」
優しく笑ったマスターの声が聞こえた。
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影咲 遥(プロフ) - 天藍さん» 天藍様、コメントを頂きありがとうございます!あわわわ、この短期間で2周もしてくださったんですか!?ありがとうございますとても嬉しいです。お気に召して頂けたようで何よりです、是非他の作品も読んでやってくださいませ! (2018年4月18日 18時) (レス) id: d73cf733f9 (このIDを非表示/違反報告)
天藍(プロフ) - 完結おめでとうございます!これ、すっっっっっっごく好きです!昨日見つけてからもう2周しました!この小説に出てくるキャラも、作者さんも、大好きです! (2018年4月18日 18時) (レス) id: 1e59b8b255 (このIDを非表示/違反報告)
影咲 遥(プロフ) - 夜空さん» 夜空様、神作だなんて恐れ多いですが、そんな風に思って頂けてとても嬉しいです!まさかお兄ちゃんのことも好きになってくださるとは、何と心の広い…きっとどこかで彼も幸せになることでしょう。そんなお話も書けたら良いなぁ…。コメントありがとうございました! (2018年4月16日 0時) (レス) id: d73cf733f9 (このIDを非表示/違反報告)
夜空 - 完結、おめでとうございます!!何という神作…。夢主ちゃんのお兄ちゃんも私的には結構好きだな。この作品では敵キャラですけど、彼にも色々あったんでしょうね…。彼も含めて皆、幸せになってくれることを願います。素晴らしい作品をありがとうございました! (2018年4月16日 0時) (レス) id: dc393f385a (このIDを非表示/違反報告)
影咲 遥(プロフ) - 夜空 星月さん» 星月様、顔面崩壊させてしまい申し訳ありません(笑)物語として語られない部分で、きっと沖田君が夢主ちゃんを幸せにしてくれる筈です!…ドSながらに。こういったコメントを頂けると、このお話を書いて本当に良かったなと思えます。コメントありがとうございました! (2018年4月15日 16時) (レス) id: 6088c20e27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:影咲 遥 | 作成日時:2018年3月30日 12時